自転車社会学会2006/12/1作成

自転車の安全利用に促進に関する提言(全文)

自転車の安全利用の促進に関する提言
平成18年11月
自転車対策検討懇談会

目次

1自転車対策検討懇談会委員名簿
2自転車対策検討懇談会開催経緯
3自転車の安全利用の促進に関する提言
4資料

自転車対策検討懇談会委員名簿

座長:岸田孝弥高崎経済大学大学院経済・経営研究科教授
副座長:久保田尚埼玉大学大学院理工学研究科教授
小幡純子上智大学大学院法学研究科教授
古倉宗治(財)土地総合研究所理事
渋谷良二(財)日本自転車普及協会事業第1部長
内藤泰樹東京都青少年・治安対策本部参事(交通安全対策担当)
吉岡耀子(株)JAFMATE社出版部長
(委員:五十音順、敬称略)
※警察庁出席者
矢代隆義警察庁交通局長
影山幹雄警察庁長官官房審議官(交通局担当)(〜第3回)
野村守警察庁長官官房審議官(交通局担当)(第4回〜)
石井隆之警察庁交通局交通企画課長(〜第4回)
横山雅之警察庁交通局交通企画課長(第5回〜)
栗島明康警察庁交通局交通指導課長
種谷良二警察庁交通局交通規制課長(〜第4回)
太田誠警察庁交通局交通規制課長(第5回〜)
オブザーバー
内閣府(政策統括官(共生社会政策担当)付参事官(交通安全対策担当))
文部科学省(スポーツ・青少年局学校健康教育課)
国土交通省(道路局地方道・環境課)

自転車対策検討懇談会開催経緯

平成18年4月12日(水)第1回懇談会
平成18年5月23日(火)第2回懇談会
平成18年6月26日(月)第3回懇談会
平成18年8月2日(水)第4回懇談会
平成18年9月28日(木)第5回懇談会
平成18年11月14日(火)第6回懇談会

自転車の安全利用の促進に関する提言

はじめに

自転車は、我が国において、国民の身近な交通手段として利用され、幼児から高齢者まで様々な目的・用途に幅広く利用されており、その保有台数は自動車・原動機付自転車の総数に匹敵するものとなっている。
しかし、時速20キロ以上で疾走するスポーツタイプの自転車から子供用の自転車まで、その利用・走行実態の多様性ゆえに、自転車を交通の現場でどのように取り扱うかは交通管理上難しい課題である。また、我が国の道路は車両の通行スペースである車道と歩行者の通行スペースである歩道を主体として整備がなされており、その中で自転車の専用通行スペースを確保することは必ずしも容易ではない。さらに、利用者層が極めて幅広いことから、自転車利用者に対する安全教育も十分行き届きにくい面があるとともに、ルールの遵守をどこまで取締りにより担保すべきかは判断を要するところである。
こうした事情を背景として、自転車利用の進展とともに、自転車が当事者となる交通事故も年々増加傾向にあり、しかも、自転車が主に被害者となる対自動車事故と、主に加害者となる対歩行者事故の両方が増加傾向にある。また、自転車のいわば自由気ままな走行は、自転車が車両の一つであるという性格を曖昧にするとともに、自転車利用者のルール・マナー違反を誘発し、これに対する社会的批判も高まっている。
自転車に関する道路交通法上の取扱いは、昭和50年代前半までに概ね現在の内容が定められたものである。自転車は、環境負荷の少ない乗り物として地球温暖化対策の観点等からも見直されており、今後ますます、我が国交通社会の中で重要な位置付けを担っていくものと考えられ、今は自転車に係る道路管理上の諸問題を改めて検討すべき時期にあるといえる。
本自転車対策検討懇談会(以下「懇談会」という。)では、自転車に係る諸問題に検討を加え、自転車の安全利用の促進という観点から今後の警察行政の在り方を考えるべく、自転車の通行区分・通行方法の在り方や自転車利用者のルール・マナーの遵守方策等について、本年4月から6回にわたり議論を重ねてきたところであり、その結果を本提言に取りまとめたものである。
本提言においては、まず、自転車利用の現状、自転車の関連する交通事故の状況、自転車の安全対策の現状について概観した上で、自転車の安全利用を促進していくための対策の方向性を示し、さらに、具体的な対策の在り方について提言を行うこととする。

第1自転車利用の現状と交通事故の状況

1自転車利用の現状

現在の我が国において、自転車は、買物や通勤・通学などの日常生活における交通手段として、あるいはレジャーや業務の手段として、国民生活の間で多様な用途に利用されている(図1)。また、性能や形状についても、相当の速度が出るマウンテンバイクやスポーツタイプのものから、いわゆるママチャリ、子供用自転車まで幅があり、自動車や原動機付自転車と異なり運転免許制度の対象外にあることから、その利用者も幼児から高齢者まで幅広い年齢層にわたっている。
図1自転車を利用する目的についてのアンケート調査結果

自転車の保有台数も年々増加しており、(財)自転車産業振興協会統計によると、ここ10年の間でも約1千万台増えて、今や8,632万台(平成16年統計)に及び、自動車及び原動機付自転車の保有台数(平成16年の国土交通省統計で約9,046万台)にほぼ匹敵する数字となっている(図2)。
図2自転車保有台数と自動車・原動機付自転車保有台数の推移

このような状況から、自転車は、歩行者や自動車と並び、実態として、我が国交通社会における主要な交通主体の一つとなっているといって差し支えないと考えられる。

・「自転車の安全利用の促進等に関する調査研究報告書」(平成18年7月(財)全日本交通安全協会)による
・大阪市生野区、東京都渋谷区、青森県青森市、静岡県富士市の住民2600人を対象としたアンケート調査
・自転車保有台数は、(財)自転車産業振興協会の「自転車統計要覧」による
・自動車・原動機付自転車保有台数は、国土交通省統計資料「自動車保有車両数月報」による

さらに、自転車は、今後、新たなニーズや要請に応じ、ますます活用の場や機会が拡大する可能性がある。
(財)全日本交通安全協会が実施した調査によると、有識者は、短距離移動等のための交通手段としてのみならず、今後は特に、レジャーや健康増進の目的での自転車の利用が増え、また、それを望ましいことと見ている(図3)。
図3今後の自転車の利活用に対する見通し・望ましい方向性

また、自転車は、化石エネルギーを消費せず、交通渋滞といった問題を引き起こさない環境負荷の少ない交通手段として、地球温暖化対策の観点から、国民の間でその利用を促進することが京都議定書目標達成計画(平成17年4月28日閣議決定)等の中で位置付けられている(資料1)。
これらのことから考えると、自転車は今後更に多様な用途や利用者に活用され、我が国の交通社会の中で、ますます重要な位置付けを担っていくものと考えられる。

2自転車の関連する交通事故の状況

自転車保有台数の増加と国民の自転車利用の進展に伴い、自転車の関連する交通事故は、年々増加している。
平成7年以降の自転車乗用中の死者及び負傷者の推移は図4のとおりであり、概ね事故全体の死者及び負傷者の総数と同傾向の増減を示しているが、死者数についてみると、10年間の減少率は、総数が−35.7%であるのに対し、自転車乗用中は、−24.5%と小さくなっている。

図4自転車乗用中の死者及び負傷者数の推移
・「自転車の安全利用の促進等に関する調査研究報告書」(平成18年7月(財)全日本交通安全協会)による
・学識経験者、自転車関連のマスコミ等自転車問題に関する有識者等77団体に対するアンケート調査

また、平成17年の自転車乗用中の30日以内死者は1,105人で、全死者に占める割合は13.9%である。状態別の30日以内死者数の割合を欧米諸国と比較すると図5のとおりであり、各国の交通分担率等を反映して、それぞれの比率は様々であるが、我が国の自転車乗用中死者の割合は、欧米諸国のそれに比べてかなり高いといえる。

図5状態別30日以内死者数の割合の欧米諸国との比較
欧米諸国の数値は、国際道路交通事故データベース(IRTAD)による

次に、平成7〜17年の自転車が関連する交通事故(自転車が第1当事者又は第2当事者となった事故で、自転車同士の事故は1件と計上している。以下「自転車関連事故」という。)の件数の推移を示したものが図6であり、平成17年の件数は183,653件で全交通事故件数の19.7%を占めている。

図6交通事故発生件数と自転車関連事故件数の推移

この10年で自転車関連事故は、1.3倍に増加しているが、このうち、自転車対自動車の事故は122,470件から152,287件と約1.2倍の増加であり、自転車対歩行者の事故は563件から2,576件と約4.6倍に急増している。
平成17年中の自転車関連事故及び自転車関連死亡事故(自転車が第1当事者又は第2当事者となった死亡事故をいい、自転車同士の事故は1件と計上している。以下同じ。)を道路形状別・事故類型別に見たものが表1及び表2である。自転車関連事故の73.8%は交差点で発生しており、中でも、自転車と自動車の出合い頭事故、右左折時の事故が多くなっている。自転車関連死亡事故についても、その傾向は同様であるが、自転車関連事故に比べ単路(注1)での事故の割合が33.3%と高くなっている。
(注1)単路とは、道路のうち交差点及び踏切等を除いた部分をいう。

表1道路形状別・事故類型別自転車関連事故
表2道路形状別・事故類型別自転車関連死亡事故

自転車関連事故の主な特徴(データはすべて平成17年中のもの)は、以下のとおりである。

○事故の当事者となった自転車乗用者を年齢層別で見ると、幼児から高齢者まで広く及ぶが、13〜19歳の者が当事者である事故が全自転車関連事故の22.7%を占め、最も多くなっている(図7)。
図7年齢層別自転車関連交通事故
○自転車乗用者の通行目的別で見ると、「買物」が最も多いが、「訪問」「通勤」「通学」など様々であり、自転車の利用目的の多様性がここにもうかがえる(表3)。
表3通行目的別自転車関連交通事故
○自転車乗用者の法令違反別で見ると、安全運転義務違反、交差点安全進行義務違反など、自転車乗用者に何らかの法令違反がある事故が全体の68.4%を占めている(図8)。
図8法令違反別自転車関連交通事故

なお、自転車乗用中の事故死者846人を損傷部位別で見ると、頭部損傷によるものが全体の68.2%を占めている(図9)。
図9自転車乗用中死者の損傷部位別割合

さらに、自転車に係る事故について、より詳細に分析するため、平成17年中の自転車対車両事故で自転車運転者が死亡した事故769件、同じく自転車対歩行者事故で歩行者が死亡又は重傷となった事故261件について特別に調査した結果を以下に示す。
表4及び表5は自転車の進行経路(衝突地点)別の件数、表6及び表7は自転車側の事故要因別の件数を示したものである。

表4自転車の進行経路別事故件数(自転車対車両の事故で自転車運転者が死亡した事故)
表5自転車の進行経路別事故件数(自転車対歩行者の事故で歩行者が重傷又は死亡した事故)
表6事故要因別事故件数(自転車対車両の事故で自転車運転者が死亡した事故)
表7事故要因別事故件数(自転車対歩行者の事故で歩行者が重傷又は死亡した事故)

第2自転車の安全対策の現状

1自転車の走行環境の現状

自転車保有台数の増加と自転車利用の進展に併せて、道路管理者による自転車の走行環境の整備も着実に進められてきた。
道路法に基づき道路構造の一般的基準を定めた道路構造令では、自転車の専用通行空間として自転車道、自転車と歩行者の共用通行空間として自転車歩行者道を規定し、自転車の通行空間として、その他に自転車専用道路、自転車歩行者専用道路が定められている。
これらを合わせた自動車交通と分離された自転車の通行空間は、平成16年度では総延長76,847kmに及び、昭和54年当時の4.6倍となっている(図10)。ただし、自転車専用の通行空間である自転車道及び自転車専用道路については、総延長2,356kmであり、歩道延長(155,786km、道路統計年報2005による)と比べても十分とは言い難い(図11)。

図10自転車走行空間延長の推移
図11自転車道の整備状況
自転車専用道路:468km
自転車道:1,199km
自転車歩行者道:70,536km
自転車歩行者専用道路:4,645km
歩道,歩道なし:約100万km(車道の路肩等を走行)

国土交通省においては、平成13年の道路構造令の改正で、自動車及び自転車の交通量の多い道路を新設、改築する場合には、自転車道を原則設置することとするなど、引き続き自転車道の整備を進めるほか、自転車歩行車道について自転車の通行部分をカラー舗装したり、車道に自転車レーンを設置するなど、自転車と歩行者・自動車の共用通行空間についても視覚的に分離することにより、自転車利用環境の整備に努めている(資料2)。
また、現行道路交通法において、自転車は、車道(自転車道が設置されている場合は、当該自転車道)通行を原則としつつ、普通自転車(注2)については、普通自転車歩道通行可(以下「自転車歩道通行可」という。)の規制が都道府県公安委員会により実施されている場合は歩道を通行できることとされている。同規制については、各都道府県において累次実施され、その総延長は平成17年度末で68,992.6km(警察庁統計による)、歩道延長の44.2%に及んでいる。
自転車の通行空間確保の取組み状況は上記のとおりであるが、一方で、我が国の道路状況において、特に自転車道の整備が容易ではないことも事実である。自動車の通行量が多く、およそ自転車の通行が困難な道路も少なくなく、また、自転車走行の迅速性・快適性よりも、何より安全性を重視する自転車利用者も多いことから、勢い自転車の歩道通行が広く見られるようになっている。
現実には、自転車歩道通行可の規制の有無にかかわらず、自転車の利用者が自らの判断で歩道通行しているという実態も一般的に見られ、こうした中で、一部の自転車の歩道上での無謀な通行やルール違反、マナーの悪さが歩行者の立場から厳しく指摘されるという事態が生じている(資料3)。
(注2)普通自転車とは、車体の長さが190センチメートル以下、幅が60センチメートル以下で、その構造として側車を付していないこと、歩行者に危害を及ぼすおそれがある鋭利な突出部がないこと等一定の要件を満たしている自転車をいう(道路交通法施行規則第9条の2)。

2自転車に係る安全教育等の現状

警察では、従来から、交通安全教育の一環として、自治体や学校、交通安全協会等と連携し、交通安全教育指針に基づいて自転車の通行方法に関するルール等を教えたり自転車走行の実技指導を行う自転車教室を実施しており、自転車事故の増加等の情勢を背景に、その実施回数も年々増加している(図12)。

図12自転車教室の実施回数の推移
平成17年中の自転車教室の実施回数は22,829回(5年で1.17倍)であり、受講人員は延べ約254万人に及ぶが、その6割以上は小学生となっている(図13)。

図13平成17年中の自転車教室の受講者(計253万9,224人)
・警察主催のもの又は警察職員が講師として派遣されたものを計上
・児童数、生徒数は文部科学省「平成17年度学校基本調査」(平成17年5月1日)より
・高齢者数は、総務省統計局「推計人口」(平成17年10月1日)より

児童・生徒を対象とした自転車安全教育については、もとより、学校と警察の緊密な連携が重要となる。現在の学習指導要領等のもとで、自転車安全教育を含めた交通安全教育は、安全学習としては、体育又は保健体育の保健領域や「総合的な学習の時間」等の中で行われ、安全指導としては、学級活動やホームルーム活動、学校行事、生徒会活動、クラブ活動等の中で行われている(図14)。

図14学校における安全教育の領域と構造
『「生きる力」をはぐくむ学校での安全教育』(平成13年11月文部科学省)より抜粋

自転車教室の内容も様々な工夫がなされ、最近では、「自転車運転免許証」の交付を通じた自転車教室や、中・高校生に身体障害者の疑似体験をさせて相手側の立場に立った安全走行の重要性を自覚させたり、加害者の視点から事故の衝撃や違反行為の危険性を体験させるなどの教育手法を採り入れている例もある(資料4)。
また、児童・生徒のみならず、成人を対象に、高齢者向けの自転車教室や、高齢者、子供及びその親の三世代交流による安全教育等を実施するものも増えている。
このほか、警察では、自治体や関係機関・団体と連携し、自転車の事故防止やマナーの向上等を訴えかける広報啓発活動を実施しており、平成16年以降は、5月の「自転車月間」(自転車月間推進協議会主催、警察庁等関係省庁後援)に合わせて、自転車の安全利用促進のための広報キャンペーンを全国的に実施している(資料5)。

安全教育
○学級(ホームルーム)等における個別の安全指導
○部活動等の課外における安全指導
○日常の生活における安全指導

安全指導
○学級活動、ホームルーム活動における安全指導
○学校行事等における安全指導
○児童会活動、生徒会活動、クラブ活動における安全指導
○自立活動における安全に関する学習

安全学習
道徳
○体育科の保健領域(3〜6年生)、保健体育科の「保健分野」、「科目保健」
○関連教科における安全に関する学習
○「総合的な学習の時間」における安全に関する学習

3自転車に係る交通指導取締りの現状

自転車利用者のルール遵守を担保するためには、ルールに関する交通安全教育と併せて、その違反に対しては、現場における指導や取締りを行うことが必要であることはいうまでもない。
警察では、自転車利用者による交通違反に対し、指導警告票を交付するなどして街頭指導を行うことを基本とし、特に、悪質・危険な交通違反に対して検挙措置を講じている。
平成17年中の指導警告票交付件数は1,127,331件であり、違反の内訳は、無灯火運転、二人乗り運転などとなっている(表8)。また、自転車を中心とする軽車両(注3)の検挙件数は326件であり、違反の内訳は、指定場所一時不停止、信号無視などとなっている(表9)。

表8平成17年中の自転車に係る指導警告票交付件数表9平成17年中の軽車両の検挙件数

警察庁では、自転車に係る事故の増加や自転車利用者の交通マナーの悪化等の情勢を受け、平成18年4月、自転車利用者に対する交通指導取締りの強化の方針を示した。具体的には、街頭における指導警告活動をより強化するとともに、違反行為により通行車両や歩行者に具体的危険を生じさせたり、指導警告に従わず違反行為を継続するなど、以下のような悪質性の高い交通違反については、交通切符を適用して積極的な検挙措置を講ずることとした。

(例)
・信号無視、一時不停止、通行区分違反等で交通の具体的危険を生じさせたもの
・蛇行運転等により客観的に明らかな酒酔い運転
・二人乗り、無灯火等で警察官の警告制止に従わず、違反行為を継続したもの

これを受けて、各都道府県警察では、従来以上に積極的な自転車の指導取締りを行っており、平成18年9月末現在、指導警告票の交付件数は前年比24.9%増の1,005,876件、自転車利用者の検挙件数も463件となっている。特に、交通切符による検挙件数は、1〜4月までの4か月で33件であるのに対し、5月以降の5か月で175件となっている。
(注3)軽車両とは、自転車、荷車その他人若しくは動物の力により、又は他の車両に牽引され、かつ、レールによらないで運転する車(そり及び牛馬を含む。)であって、身体障害者用の車いす、歩行補助車等及び小児用の車以外のものをいう(道路交通法第2条第1項第11号)。

第3自転車の安全利用に関する対策の方向性

第1及び第2で見てきたとおり、自転車は、今や国民の身近な交通手段として定着し、多様な利用者層に多様な用途・目的で利用されており、環境負荷の少ない交通手段等として今後一層の利用の促進が求められている。一方で、自転車の保有台数の増加と利用の進展に比して、自転車道等の自転車専用の通行空間の整備が十分に進まない中、自転車が当事者となる事故が年々増加傾向にあるとともに、自転車の歩道通行が一般化し、自転車利用者のルール・マナーの悪さが厳しく指摘されるという事態も生じている。
現在の普通自転車の通行方法等に関する規定を定めた昭和53年の道路交通法改正から既に約30年が経過しており、また、今後一層の自転車利用の進展が予想される一方で、これに見合う自転車専用の通行空間の整備が飛躍的に進むとは考えられない状況からすれば、現状のままでは、自転車が当事者となる事故の増加や自転車に係る交通秩序の維持が確保されないという問題状況が更に拡大することも十分予想される。
その意味で、我が国の交通実態を踏まえつつ、自転車を主要な交通主体の一つとして明確に位置付け、自転車と歩行者・自動車との共存を図りながら、自転車の安全かつ適正な利用を促進するため必要な対策を講ずるべき時期に来ているのではないかと考えられる。
一般に、交通の安全と円滑を確保するための対策は、それぞれの交通主体に応じた道路環境の整備と、通行区分や通行方法等に関するルールの設定、ルールを遵守させるための安全教育・広報啓発と違反に対する取締りが一体となって行われるものであり、自転車に関する問題も、このうちのいずれかのみで解決するというものではない。また、交通管理の観点からは、当該交通主体の性格が単純で画一的であるほど、ルールを設定する上でも遵守を求める上でも管理が容易であるが、自転車については、走行性能や利用・通行の実態が極めて多様であり、また、それを許容せざるを得ない。そして、交通管理の観点からは、自転車自体の安全と歩行者等他の交通主体の安全を第一に考えなければならないが、そのために自転車の利用を抑制する方向に進むことのないよう配慮しなければならない。

そこで、対策の方向性としては、
○第一に、我が国における自転車の利用実態及び事故実態を踏まえ、利用目的も利用主体も多様な自転車について、それぞれに応じた通行空間の確保を図る
○第二に、歩行者の安全を確保しつつ、自転車の安全かつ適正な利用を促進するため、歩道において歩行者と、車道において自動車との適切な共存が図られるような通行環境と実効性のあるルールを整備する
○第三に、自由気ままな走行が常態化し、交通の場における自らの位置付けを曖昧なものとさせている自転車利用者に対し、交通ルール・マナーの遵守を徹底させるという視点に立って、必要な制度の整備と、自転車に係る交通安全教育、自転車の交通違反に対する指導取締り、自転車の走行環境の整備等の諸対策を総合的に推進していくべきであると考えられる。

また、これらの対策を推進するに当たっては、警察と自治体や学校、道路管理者等が緊密に連携するとともに、地域住民や自転車利用者の意見を反映することに十分配意すべきである。

第4自転車の通行空間・通行方法の在り方について

1自転車の通行空間の考え方

自転車は、現行道路交通法でも規定されているように、車両の一種であり、その走行性能を発揮し、通行の安全性とともに迅速性・快適性を確保するためには、その通行空間は、専用の通行空間である自転車道か、又は車道に求められるべきである。このような考え方は、諸外国においても例外がなく(資料6)、ルールはクリア・シンプルであることが望ましいことからすれば、自転車の通行空間は(自転車道が整備されている場合は別として)車道に一本化すべきという考え方もあり得る。
しかしながら、我が国における自転車利用の多様性、とりわけ、子供や高齢者の利用、主婦等による買い物や子供の送迎目的の利用等身近な生活における移動手段として自転車が幅広く利用されており、これらの利用主体又は利用目的においては、自転車に車両としての迅速性等の機能を求めていない場合も多いことを考慮する必要がある。
また、前記表4で示した特別調査の結果を更に分析すると、我が国の自転車対車両の死亡事故では、歩車道が分離されている道路から進入した交差点事故270件の約43%(115件)が車道から進入して発生した事故であり(表10)、歩車道が分離されている道路での単路の事故(自転車が横断中の事故を除く。)114件のうち74%(84件)が車道での事故であった(表11)。なお、84件の内訳は、自転車歩道通行可の規制が行われている道路であった事故が49件、自転車歩道通行可の規制がなされていない道路での事故が35件であった。

表10交差点における進行経路別・事故類型別事故件数(自転車対車両の事故により自転車運転者が死亡したもの)
歩道から交差点に進行車道から交差点に進行
※進行経路の「交差点内」とは、交差点・左側端以外の交差点を進行中の場合、「交差点外」とは、交差点にある横断歩道等の外側を進行中の場合をいう。()は、歩車道の区分のある道路から交差点に進行した件数をいう。

表11歩車道が分離されている単路における進行経路別交通事故件数(自転車が横断中の事故を除く。)

こうした我が国の事故実態や道路実態、更に今後の高齢化社会の進展等を考慮すると、我が国において自転車を一律に車道通行とすることは現実的ではなく、車道通行を原則としつつ、一定の場合に歩道での通行を認める現行制度の考え方を今後も基本的に維持することが適当と考えられる。
さらに、我が国の道路事情を考慮すると、歩道の幅員が狭く自転車歩道通行可の規制は行われていないが、車道における自動車の通行量が多く、自転車の車道通行が著しく危険である場合も少なからず見受けられる。また、歩道について、通勤・通学時間帯等は歩行者の通行量が多く自転車の通行は適さないが、その他の時間帯は通行に支障がないような状況も多いと考えられる。このような場合に幅員の広さにかかわらず交通規制を実施したり、細かく時間を区分した規制を行う方法も考えられるが、道路標識等の設置により普通自転車の歩道通行を可能とする現行制度では、ある程度画一的な規制とならざるを得ず、自転車利用者の多様性や時間帯等によって変化する交通実態に対応することは困難である。
これらのことを考慮すると、幅員等の要件を満たし自転車歩道通行可の規制が行われている歩道以外の歩道であっても、児童・幼児が運転する場合や自動車交通量が多く自転車が車道を通行することが危険な場合などには、歩道通行を認めても差し支えないのではないかと考えられる。
ただし、上記のような自転車の歩道通行を認めることとする場合には、歩道では歩行者の安全を最優先すべきであることから、子供や高齢者を含む歩行者の通行の安全を確保するため十分な配慮が必要であり、歩道上での自転車の通行ルールを明確化するとともに、これを普及啓発し遵守させる努力が必要である。
また、現在の道路交通法では、自転車が交差点を進行する場合には、自転車横断帯がある場合は自転車横断帯を、自転車横断帯がない場合は車道の左側端を通行することとなっているが、前記表10のとおり、交差点での自転車乗用者の死亡事故では、車道の左側端又は交差点内での事故が多い(311件、交差点での死亡事故の66%)ことなどから、自転車横断帯のない交差点では自転車の横断歩道の通行を認めることとした上で、歩行者の安全確保のためのルールを定めることも検討すべきと考えられる。

2自転車の走行環境整備の在り方

自転車の通行空間を基本的に上記のように考えるとしても、それにより自転車の走行環境整備の必要性が減殺されるものでないことはいうまでもない。
自転車利用の安全性と迅速性・快適性を可能な限り確保し、自転車と自動車、歩行者との適切な共存が図られるよう、以下のような観点から自転車の走行環境の整備を推進していくことが望まれる。

(1)自転車の迅速・快適な通行を確保するためには、自転車道又は車道における通行空間を確保する必要がある。
この点について、自転車の歩道通行が認められている道路であっても、自転車の走行性能を発揮するような方法で車道を通行しようとする自転車があることを踏まえ、自転車の走行環境を整備する必要があることに留意すべきである。

ア自転車の安全性(異種交通の分離)と迅速・快適性の観点からは、自動車や歩行者の通行空間と分離された自転車専用の通行空間(自転車道等)の整備を進めることが望ましい。
イ自転車道の整備が難しい場合であっても、道路の通行スペースを再配分するなどにより、車道に自転車の専用の通行空間を確保していくよう努めるべきである。
ウ自転車と自動車の共用空間を含め、車道を通行する自転車の安全確保が図られるようなハード面・ソフト面の整備に努める必要がある。

(2)歩道における自転車の通行空間に関しては、自転車歩道通行可の規制が行われている歩道等では、可能な限り、自転車の通行部分を指定するなどにより、自転車と歩行者の通行の分離を促すことが望ましい。また、当該歩道が歩行者と自転車の共用空間であることが歩行者や自転車利用者にとって明確なものとなるよう、道路標識の設置方法等についても配意する必要がある。
なお、自転車歩道通行可の規制が行われている歩道等については、限られたスペースを歩行者と自転車が共用することになることを踏まえ、違法工作物・物件や放置車両等を排除するための取組みが特に積極的になされる必要がある。

(3)車道・歩道のいずれに自転車の通行部分を確保する場合でも、各交通主体が明確に通行部分を認識できるような配慮が必要であり、可能な限り、縁石、植栽等で通行部分を物理的に分離したり、自転車の通行部分として指定された部分をカラー舗装とするなど、自転車の通行空間の明確化を進めるべきである。

(4)上記の環境整備に当たっては、

○自転車道や車道における自転車の走行環境の整備状況に応じ、自転車歩道通行可の規制を解除すること
○自転車が車道を通行することが特に危険な場合は、当該道路の自転車通行を禁止するなどの措置を講ずること

など、個々の道路について交通環境の変化に応じた交通規制を実施するよう配慮する必要がある。

(5)自転車の走行環境の整備方法については、個々の道路ごとに、道路状況、交通実態等を勘案して検討すべきであり、警察と道路管理者、地域住民等が協議の場を設けるなどして、道路整備や交通規制の在り方等について関係者の意見を集約しながら整備を進めていくべきである。
また、こうした取組みを計画的に進めるため、モデル地区を設定し、社会実験として自転車の走行環境を整備することも検討すべきである。

3自転車の通行方法の在り方

自転車の通行方法については、上記1の考え方に立ち、自転車の通行区分について検討するとともに、特に歩道における自転車と歩行者の共存を図るための実効性のある具体的なルールを定めることが適当である。
具体的には、例えば、

○歩道上での自転車の通行方法をより明確にすることとし、自転車が歩道通行する場合における速度と方法や一時停止すべき場合を具体的に明示すること
○自転車の歩道通行が認められている場合であっても、歩行者の通行量が多い場合など、歩行者の通行の安全を確保できないおそれのある場合は、自転車を降りて押して歩くか、又は車道を通行すること
○迅速な走行を行おうとする自転車利用者は、車道を(適正な方法で)通行するようにすべきこと
○歩道において自転車の通行部分が指定されている場合は、当該部分に歩行者はできるだけ立ち入らないようにすること

などのルールが考えられるほか、交差点付近等での車道と歩道の乗り移り(をすべきでない場合)や自転車が歩道を通行する場合の相互通行の在り方、車道を通行する自転車の安全を確保するための自動車の通行方法(一定の間隔を確保すること等)等についても、できる限り明確なルールを設けることが適当である。
上記のような自転車の通行方法については、内容に応じ、法令又は交通の方法に関する教則(以下「教則」という。)等において規定し、国民への周知を図っていくべきである。

4その他

自転車の事故時における被害軽減対策として、ヘルメットの着用が有効であることは、経験則上明らかであるが、(財)日本交通管理技術協会が自転車同乗幼児の安全対策に関して実施した転倒衝撃実験でもヘルメットの被害軽減効果が確認されている(資料7)。また、現在、自転車通学を認めている小中学校において、約5割の学校がヘルメットの着用を義務付けているという調査結果もある(注4)。
前記図9のとおり、自転車乗用中の死者の多くが頭部損傷を主な要因としていることを考慮すると、幼児や児童を始め、自転車利用者に対し広くヘルメットの着用を促進していくことが適当と考えられる。
(注4)警察庁が平成16年10月に実施した全国の小学校、中学校、高等学校、中等教育学校に対する聞き取り調査の結果では、自転車通学を認めているとした12,434校のうち、ヘルメットの着用を義務付けているとの回答があった学校は6,258校(50.3%)であった。

第5自転車利用者のルール・マナー遵守方策等について

1自転車に係る交通安全教育・広報啓発の在り方

の第22のとおり、これまでも警察や学校等では自転車に係る交通安全教育を実施しているところであるが、自転車の安全利用を図り、自転車と自動車や歩行者との共存を図るためには、交通安全教育や広報啓発活動は今後も極めて重要である。
特に、第4に示した自転車の通行空間の考え方や、具体的な自転車の通行方法等については、法律や教則等で定めた内容をマスコミ等を通じて広報するとともに、自転車利用者に対して教育することにより、周知徹底を図る必要がある。
今後は、特に以下の点を考慮し、自転車に係る交通安全教育や広報啓発活動を更に幅広く実施していくことが望まれる。

(1)警察が実施する自転車教室の対象は、従来、小学生が中心となっている。教育効果等の点から小学生に対する自転車教室は引き続き実施すべきであるが、通学等で自転車の需要が高いのはむしろ中学・高校生であり、全自転車関連事故に占めるこれらの年齢層の事故の割合が高いこと(図7参照)や、これらの年齢層の者に対する自転車安全教育はプレドライバー教育という意味も有すること等を考えると、今後は、中学・高校生に対する自転車安全教育をより充実させていくべきである。
また、生徒に対する自転車安全教育については、警察と学校が相互に協力しながら、それぞれの責任において推進していくべきである。

(2)自転車に係る交通安全教育を行うに当たっては、以下のような実効性のある教育手法を採り入れることも検討すべきである。

○自転車事故のより緻密な調査・分析に基づき、事故の実態や要因、危険な違反行為等について、子供から大人まで幅広く教育すること
○米国では自転車の歩道通行が危険であるとの分析結果があること(資料8)等も踏まえ、歩道から車道に出るときや交差点通行時、路外施設を車両が出入りする場面等において、自転車が自らの存在を自動車の運転者に認知させることの重要性等について教育すること
○自転車の交通違反についても刑事罰の対象となる(注5)ことを認識させること
○ルール・マナーを知識として教えるだけでなく、ルール・マナー違反により具体的にどのような危険が生ずるか、また、事故を起こした場合にどのような責任を負うか等を特に若者に対しては重点的に教えること

(3)車道における自転車と自動車との共存、歩道における自転車と歩行者との共存を図るため、自転車利用者に対してだけでなく、自動車運転者や歩行者に対しても、自転車の通行ルールや事故実態等について教育・広報していくべきである。

(4)個々の交通現場で自転車利用者が通行ルールを理解できるよう、事故多発路線・箇所や自転車の交通量の多い路線等を重点に、交通法規の内容や違反に対する罰則等を示した看板を設置するなど、自転車利用者に対する具体的な広報啓発を推進することを検討すべきである。
この場合、法律上自転車の歩道通行が禁じられており、そこを通行してはならないときや、法律上自転車の通行が可能な歩道であっても、歩道上の歩行者の通行が多く、自転車の走行が歩行者に危険や迷惑を及ぼすときは、自転車を降りて押して歩くようにしなければならないことなど、具体的にどのような行動をとればよいか分かるように広報啓発の内容を工夫する必要がある。

(注5)自転車についても、例えば、以下のような違反とその罰則が定められている(括弧内は道路交通法の条文)。

○信号無視3月以下の懲役又は5万円以下の罰金(第7条、第119条第1項第1号の2)
○無灯火5万円以下の罰金(第52条第1項、第120条第1項第8号)
○酒酔い運転3年以下の懲役又は50万円以下の罰金(第65条第1項、第117条の2第1号)

2自転車による交通違反の指導取締りの在り方

自転車の交通違反は日常的にも多く見られ、自転車利用者のルール違反、マナーの悪さが厳しく指摘されていることから、自転車に対する指導取締りは一層強化していくべきである。また、第3の方針に従い自転車の通行方法について見直すこととした場合、交通安全教育の推進と併せて、街頭でもこれらについて指導し、違反に対する取締りを行う必要があると考えられる。

(1)第2の3で見たとおり、警察では、現在自転車の違反を現認した場合に、指導警告を行うことを基本とし、違反行為により通行車両や歩行者に具体的危険を生じさせたり、指導警告に従わず違反行為を継続するなど、悪質性の高い交通違反について交通切符を適用し検挙措置を講じている。しかし、この指導警告と検挙措置(交通切符の適用)との間には、件数、効果等の点で格差があることは否定できず、本来はその中間的な制度が設けられることが望ましいと考えられる。
この点、自動車等の運転者がした違反行為のうち、比較的軽微であって、定型的で明白なものについては、「反則行為」として通告を受けた者が任意に反則金を納付したときは当該行為について公訴が提起されないという「交通反則通告制度」が設けられている。自転車に係る違反行為についてはこの制度の対象となっていないが、自転車の運転者には子供もあり、自動車と比較して違反の形態・程度も多様と考えられることや、自動車と異なり運転免許制度がないので違反者の人定確認に困難が予想されることなどもあり、直ちに同様の制度を導入することは難しい状況にある。
また、一部の自治体が実施しているいわゆる「ポイ捨て条例」などを参考に行政制裁金を課することも考えられるが、自転車の道路交通法違反は現在刑事処分の対象であることから、制裁の在り方については十分な議論が必要であろう。
しかし、いずれにしても、将来的には、自転車について実効性をもってルール遵守が担保されるよう、何らかの制度を導入することにつき議論し、合意形成を図っていく必要もあると考えられる。

(2)ところで、警察では現在、第2の3で見たとおり、自転車利用者による交通違反に対して積極的な指導警告を行うとともに、信号無視、無灯火、二人乗り、酒酔い運転等悪質性・危険性の高い交通違反に対して交通切符を適用した積極的な検挙措置を講ずる方針で指導取締りを強化している。統計を見る限り、従来に比べ検挙件数も相当増加しており、当面、自転車の違反に対する指導取締りについては、現在の方針に基づく警察活動の運用状況と、それが自転車利用者の交通行動に与える影響等を見守っていくことが必要と考えられる。
なお、検挙措置に関しては、検挙された者が納得できるような運用(例えば、指導警告を数回繰り返して受けたような悪質な違反者を検挙するなどの運用)も検討していくことが適当と考えられる。
また、自転車に対する街頭指導等については、自治体や民間ボランティア等との連携を含め、体制を今後更に充実していく必要がある。

おわりに

以上、自転車の安全利用を促進するための方策について、計6回の議論の結果を踏まえ、本提言を取りまとめた。当懇談会は、自転車問題について知見を有する各方面の専門家が委員となっており、各委員の自転車に対する見方や立場も様々であったが、基本的に自由に意見を述べ合って討論し、提言に関しては意見の集約を図っていったものである。特に自転車の通行空間の考え方については、委員の間でかなり見解が分かれる面もあり、改めて自転車の多様性・多面性とそれゆえの取扱いの難しさが実感された。
本提言については、結果としては現実的な交通管理という観点に力点が置かれた面もあるかもしれないが、これまで、自転車に係る交通管理について本格的に議論されることが多くはなかったことからすれば、当懇談会において、自転車を交通主体の一つとして真正面から取り上げ、諸問題への対策を取りまとめた意義は少なくないと考えられる。
また、本提言は、制度の見直しとともに、道路環境の整備、交通安全教育、広報啓発活動、指導取締りのそれぞれについて、今後の対応を求める内容となった。いずれも直ちに実現することが容易でない内容も含まれているが、これらの施策は相互に関連しているので、総合的に調和のとれた対策を推進していくことが重要と考えられる。
なお、自転車に関しては、放置自転車問題や保険・補償制度、自転車自体の安全性の問題等当懇談会ではテーマとしなかった様々な問題が他にもあることを付言しておく。
繰り返しになるが、自転車は我が国交通社会において主要な交通主体の一つとして位置付けられるべきであるし、今後もその点は変わらないと思われる。当懇談会としては、今回提言した諸対策が警察庁等の関係省庁において速やかに実現され、自転車の安全利用が一層促進されることを願うものである。



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