自転車社会学会/我が国の自転車政策のあり方に関する調査報告書2003

我が国の自転車政策のあり方に関する調査報告書2003を読んで

自転車利用推進研究会の「我が国の自転車政策のあり方に関調査報告書全文する調査報告書2003」を読んでみました。全体として,ヨーロッパ・アメリカの政策の焼き直しを基本としていて,オリジナリティはありません。しかし実際に効果が上がっている政策を採用するのは当然の選択。国情の違いを反映するのは行政に委ねられるのかもしれません。ともあれ,自転車問題のほとんどを網羅している総合政策報告書になっていると思います。順番に見ていきましょう。

第1章自転車政策の総合化と一元化

第1章は自転車についても縦割り行政を廃し,自転車担当主務大臣を任命し,総合的かつ一元的な行政を,としています。何も異論はありません(私には考察できる知識も経験もありません)。なぜ縦割り行政になっているのでしょう?。なぜ調整機能が働かないのでしょう?。フィードバッグが効かないのはなぜなのでしょう。その考察は本報告書の範囲ではないかもしれませんね。自転車総合政策は実際やって(できるとして)みなければ効果的か?効率的か?わからないのかもしれません,自転車行政に限りませんが。

「利用促進,走行環境整備,交通安全,放置対策が総合政策の中身」としていますが,報告書の内容との対応はとれていなません。交通安全・走行環境整備(2章),放置対策(3,6章),利用促進(4章),自転車安全規制(5章),利用者の責務(7章)が中身になるのでしょう,この報告書では。

第2章道路の再配分で走行空間を確保

第2章は交通機関としての自転車の安全確保に関する章です。いたずらに自転車レーンの設置(コスト的,空間的に制限がある)を叫ぶのではなく,クルマと道路をシェアしていこうというアプローチは合理的かつ現実的で好感が持てる。もちろんクルマの側からの反論があるだろうから調整が必要になることだろう。道交法第63条の4(普通自転車の歩道通行)の段階的廃止を明言したのは初めてかな。道筋を示したことは評価できる。

自転車、バス走行空間におけるクルマの駐停車と荷捌きの禁止は違法駐車なくし隊のコンセプトと同じ。放置自転車を目の敵にするなら違法駐車も同じように撲滅・駆除すべきでしょう。

日本の自転車死亡者が多いのには愕然とした。日本でいかに自転車が利用されているか?の証拠なんだろう。人口で割ってみればオランダとドイツ,オランダを同程度の水準にあるので飛び抜けて高いわけではない。自転車利用水準を考慮していない比較は意味がないだろう。

第3章放置誘因事業者に駐輪場設置を義務化

第3章では放置自転車対策を鉄道事業者に求めている。鉄道事業者に責任を負わせる・・・のは妥当なのだろうか?。放置削減を図るため車内への自転車持ち込みは意味があるのだろうか?。放置されているのが通勤・通学用自転車なのだから,その車内への持ち込みは通勤・通学時間帯に自転車の持ち込みを考えることになるが・・・・現実的だろうか?。

<別項>「放置」削減をめざす循環利用としての共有自転車の普及

3章のあとに(別項)として共有自転車に関する記載がある。共有自転車は・・・自転車に魅力がない。身体に合わないタイヤに空気の入っていない自転車に乗る気になれない,私には。

第4章自転車通勤の奨励で活用推進

第4章は自転車通勤(通学)にインセンティブを!で何も異論はない(^-^)。

経済的補助には予算(税収)の裏付けが必要である。その必要性,予算の効果が目に見える形で現れないと・・・この財政難の時代には難しいだろう。予算を付ける,補助金をばらまくではなく,国が自転車通勤・通学というコンセプトを打ち出し,精神的,文化的な奨励を行うのが現実的な政策だろう。口先行政(行政がコンセプト作りとその普及を図る)でなぜいけないのだろう。何も利権が絡まないし(^-^)。

企業側にとっては駐車場よりはるかに小さな駐輪場,社員の健康増進により保険負担・医療費負担の軽減をアピールしていく方が有用だろう。通勤・通学以外の自転車利用は推進する必要はないのだろうか?。

第5章国の製品安全基準の早期確立

第5章は自転車そのものの安全基準の話。自転車の破壊・損傷に起因する負傷・死亡事故がどのくらい生じていて,そのために安全基準の必要だというストーリーがない。自転車が必ずしも安全なものではない,との認識が国民にないのだろうか?。安物買いの命失いは常識ではないのだろうか?。

必要性を明らかにしないと規制を作ることはコンセンサスにならない。民間基準の活用と普及を図り,それでも充分な安全性が確保できなければ法的基準作りもやむを得ないと思うが。これほどローテクで長年にわたって使用されてきている自転車にいまさら国の定める安全基準が必要なのだろうか?。

第6章放置・盗難に一元対応できる登録制度

第6章は放置自転車対策,盗難自転車対策としての電子タグの構想である。ユビキタスコンピュータの一環として安価な電子タグが実用化されようとしている現在,タイムリーな提案といえることだろう。電子タグは放置自転車対策として,使い道があることだろう。盗難にも効果があるかな。タブン,コストも充分小さく抑えることができる。どのようなシステムが合理的,効果的,効率的なのだろうか?。

「自転車登録に当たっては、自転車の製造、輸入、販売業者が打刻している製造番号を積極的に活用する」・・・・の意図がわからない?。道路運送車両法では自動車の刻印をベースにして車検制度(登録制度)を構築しているので,それに引きずられた(同じ方法でいいと誤解した)のだろうか?。(電子タグが付けられることになる?)書籍やCDや衣料品に刻印が打たなければとは誰も思っていないだろう。タグの偽造,タグの付け替え対策として別の識別を設けるという考え方もあることだろう。タグの偽造,交換が割の合わない犯罪である必要はあるのだろう。電子タグ全体の問題なので・・・誰かが解決してくれる?(^-^)他力本願。

第7章利用者の責務の明確化と教育・啓発の徹底

第7章は当然のことながら自転車利用者の責務と責任について認識してもらおうという章である。学校教育のみならず自転車免許にも言及している。教育の成果を確認する方法として有用だろう。自転車も交通体系の一部であり車道を走るためにはそれなりの技術と教育が必要である。道路交通だけではなく,自転車整備等の安全面での教育も必要であるとしている。

第8章「2025年、25%(ニコ・ニコ)計画」に向けて(「歩行者・自転車特区」の提案,「自転車ユーザーユニオン」の創設)

第8章では以上の自転車政策を実現するツールとして自転車特区と自転車ユーザーユニオンを上げている。

・自転車特区は以上の対策の有効性を検証,宣伝する場として有用だろう。有効性が実証できなかった対策が拡大されることもない。政策の有効性を実社会で評価してから実施に移す妥当なプロセスである。

・ユーザーユニオンの結成は印象的でしたね(意表をつかれた?)。自転車ユーザーユニオンは自転車利用推進研究会が「ユニオンの結成をめざす考えである」とのことであるので・・・どのようなユニオンが生まれるのか?関心を持って見ていきたい。ユーザーの主体的な組織でなければユーザーユニオンは機能しないだろう。ユーザーユニオンの所轄官庁をめぐって綱引きなどという阿呆らしいことは願い下げにしたい。

全体の構成

全体の構成を見てみよう。
1章は行政手法の話(一般論)
2章が交通安全
3章は放置対策
4章は利用促進(のうちの通勤・通学)
5章は自転車の安全基準
6章も放置対策
7章は利用者の責務
8章も政策実現のツールの話
3章と6章は放置対策として一緒にした方がいいだろう。利用促進として通勤・通学にしか言及されていないがそのほかの利用促進はないのだろうか?。

整合性がとれているし,トーンも一様である。逆にいえば多くの人の意見を調整してまとめたという印象はない。「本報告書は当研究会にオブザーバーとして参加いただいた(財)民間都市開発推進機構都市研究センター研究理事・古倉宗治氏の研究に依拠したところも多く、ここで古倉氏に謝意を表する次第である。」とある。古倉さんの論文を下敷きに委員のみなさんの意見はどのように反映されたのだろうか。


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