自転車社会学会

中間答申「今、転換のとき〜よりよい暮らし・経済・環境のために〜」

平成14年8月2日
社会資本整備審議会
道路分科会基本政策部会

はじめに

我が国は、現在、新たな世紀を迎え、取り巻く環境が大きく変化してきており、戦後の経済社会システムそのものの改革が求められている。道路行政についても例外ではなく、今後の道路政策や行政手法について、柔軟かつ大胆な発想をもって、その改革の方向を幅広く検討する必要がある。そのため、平成14年3月5日、道路分科会基本政策部会を発足し以降月2回のペースで部会を開催し計10回精力的に議論を重ねてきた。道路は、生活道路から高速道路まで一体となってネットワークを構成し、歩行者、自転車、自動車、公共交通など様々な利用者を対象に快適な移動空間を提供するだけではなく、景観形成、防災、環境など多様な機能を持っている。この都市や地域にとって、最も身近で基礎的な社会共通基盤である道路に対して国民の関心は極めて高い。そのため、道路行政の改革の方向を検討するにあたっては、多様な道路ユーザーの時々のニーズを的確に汲み取り、反映させていくことが不可欠である。
議論を始めるにあたり、本部会における議論の進め方から改革すべきと考えた。従来の審議会にありがちとされる密室性を排除し、議事を完全公開するなどオープンな形で会議を運営することとした。また、行政側からの提案を追認するような形ではなく、各界、各地域からの幅広い意見を取り入れつつ、委員から提出された提案ペーパーを中心として議論を進めることとした。本中間報告は、このように透明性を持ったプロセスを経て、委員からの多様な提案・意見を中心にまとめられたものであり、道路行政の改革の基本的な方向を示したいとする提言である。
行政がこの提言を真摯に受けとめ、道路行政の改革の実現のために十分に検討を深め、道路行政転換への具体的な行動を起こすことを強く期待する。

平成14年8月2日
社会資本整備審議会道路分科会
基本政策部会長中村英夫

社会資本整備審議会道路分科会基本政策部会名簿

中村英夫(武蔵工業大学教授)(部会長代理)
横島庄治(高崎経済大学教授)(委員)
越澤明(北海道大学大学院教授)
残間里江子( 株) 代表取締役) ( キャンディッド・コミュニケーションズ)
白石真澄(東洋大学助教授)
家田仁(東京大学大学院教授)
中条潮(慶應義塾大学教授)
波頭亮( 株)XEED代表取締役社長)
リチャード・クー( 株)野村総合研究所主席研究員)

目次

第I部現状認識及び基本的方向
第1章経済社会についての現状認識
1−1 欧米へのキャッチアップから成熟型社会へ
(1)量的な不足は一定レベルまで解消
(2)成熟型社会への移行
(3)少子高齢社会の到来
(4)経済と環境の調和
(5)高度情報化・グローバル化の進展
1−2 持続可能な経済社会の構築に向けて−施策の峻別とパートナーシップ−
第2章道路整備の現状と諸環境の変化
2−1 道路整備についての現状認識
(1)経済社会の発展を支えた道路整備システム
(2)一定の量的ストックの形成
(3)渋滞・事故・環境など残された課題
2−2 道路を取り巻く諸環境の変化
(1)産業の空洞化による対アジア競争力の低下
(2)地球環境・沿道環境との調和の重視
(3)急激な都市化の収束と中山間地域の大幅な人口減少
(4)2030年前後をピークに減少する自動車交通量に達する
(5)財政制約と更新投資の増大
第3章道路行政についての反省と課題
3−1 投資すべきところに十分に投資しているのか
3−2 料金収入に過度に依存した有料道路制度の限界
3−3 公共事業の効率性に対する批判や不信感
3−4 「使う」観点の軽視
第4章道路行政の改革の基本的方向
4−1 道路行政の使命
4−2 3つの政策目標
4−3 行政システムの改革
(1)基本的視点
(道路ユーザーが満足する道路行政への転換)
(成果重視で新たな発展を目指す10年の実現)
(地域・都市構造の強化の支援)
(2)改革の方向
(評価システムによる峻別と集中的重点整備)
(既存ストックの有効活用・効率化)
(公)の意識に基づく新たなパートナーシップの確立)

第II部道路行政の改革のための具体的提言
第5章3つの政策目標の実現
5−1 安全で安心できる質の高い暮らしの実現
(1)安全な生活環境の確保
(2)歩行者・自転車を重視し、生活環境の改善に資する道路整備の推進
(3)災害や救急医療等緊急時への備え
(4)密集市街地の解消に資する都市計画道路の整備の推進
(5)沿道空間との協働によるまちの賑わいの創出や美しいまちなみの形成
(6)更新時代への対応
5−2 都市の再生と地域の連携による経済活力の回復
(1)道路の機能分化と既存道路の有効活用による渋滞の解消
(2)民間の建築活動の誘発など都市再生に資する道路の重点整備と都市計画道路の見直し
(3)都市部における総合的な交通システムの構築
(4)連携を重視した地域ブロック圏・地域生活圏形成の支援
(5)地域のモビリティの向上
(6)物流の効率化・情報化への対応
5−3 環境の保全・創造
(1)地球温暖化の防止
(2)沿道環境の改善
(3)自然環境の保全・創造
第6章行政システムの改革
6−1 評価システムによる峻別
(1)峻別のための評価システムの導入
(2)事業評価の充実
(3)施策評価の充実
6−2 集中的重点整備の実施
(1)集中投資期間の設定
(2)重点整備事業の峻別
(3)道路特定財源の活用
6−3 有料道路制度の見直し等
(1)有料道路制度の限定的運用
(2)多様で弾力的な料金施策の導入
(環境改善、渋滞対策、交通安全等の観点からの料金施策)
(道路ストックの有効活用のための値下げや割引制度)
(ETCの更なる活用)
(3)有利子負債の早期処理
6−4 既存ストックの有効活用
(1)多様で弾力的な料金施策の導入(再掲)
(2)道路の使い方の見直し
(3)路上工事の徹底合理化
(4)道路の情報化の推進
6−5 コスト縮減・技術開発
(1)地域に応じた柔軟な道路構造
(2)整備効果早期発現のための時間管理手法の導入
(3)技術開発の積極的な推進
6−6 ユーザーの視点に立った開かれた行政運営
(1)道路ユーザーの参加による既存道路管理手法( 道路「パフォーマンスマネジメント」の導入)
(2)市民参画型道路計画プロセス(PI:パブリックインボルブメントの導入)
(3)PFIの活用
(4) 「公」の意識に基づく新たなパートナーシップの確立)

第I部現状認識及び基本的方向

第1章経済社会についての現状認識

1−1 欧米へのキャッチアップから成熟型社会へ

(1)量的な不足は一定レベルまで解消
戦後、我が国は物、資金、インフラなど何もない、文字通り「ゼロ」からの出発であった。戦後復興に向けて、国全体が「欧米先進諸国へキャッチアップ」を目標に、すべての分野において「量的な不足の解消」を至上命題に、着実に整備・生産を進めてきた。
この間、インフラ整備に限らず、企業社会における終身雇用や年功序列型体系、産業界の協調体制など効率的に量的整備・生産を進める経済社会システムを構築し、それが日本経済の成長と国民生活の豊かさ向上に寄与し、高度成長を実現した。その結果、今日では様々な分野において量的な不足は一定レベルまで解消した。
その後、2度のオイルショックにより、それまでの大量生産・大量消費といった経済社会システムが見直され、バブル経済の崩壊とその後の失われた10年を通じ、右肩上がりの成長神話に終止符が打たれた。
(2)成熟型社会への移行
右肩上がりの成長が終焉し量的な不足が満たされつつある中で精神的な豊かさを求め国民意識の多様化・高度化が進行しているこのような成熟型社会においては、暮らしの様々な場面で、個人の価値観に合わせた選択が可能な社会を形成することが国民の暮らしの質の向上につながっていくと考えられる。
このため、これまでのような画一的な量的整備・生産を主眼とした経済社会システムでは、国民の多様なニーズに的確に対応できなくなってきており、地域や個人の多様性・自主性の尊重と自己責任原則の下で、行政(国・地方)と国民の新たな関係の構築が求められている。
(3)少子高齢社会の到来
21世紀は、2006年の1億2,774万人をピークに人口減少局面に入り、特に地方部を中心に大幅に人口が減少すると予測され、本格的な少子高齢社会が到来する。生産年齢人口(15〜64歳)については、1995年の8,717万人をピークとして既に減少過程に入っており、2030年には7,000万人を割り込むと予想されている。
一方、老年人口(65歳以上)は、現在の2,200万人から2013年には3,000万人を突破しその後も急速に増加すると見込まれており21世紀半ばには3人に1人が高齢者という社会が到来する。
(4)経済と環境の調和
今後もCO2濃度は更に高まると予想されており、地球温暖化といった地球的規模の環境問題が深刻化している。環境の変化が社会や人々の暮らしに深刻な影響を与えるのではないかという懸念が高まっており、経済と環境の調和が不可欠となっている。また、精神的な豊かさを求める国民意識への変化に伴い、自然環境や景観を重視する傾向が強まってきている。
(5)高度情報化・グローバル化の進展
インターネットの普及や情報産業の発達などIT化の進展に伴い時間や距離の制約が克服され、企業立地や居住地選択などの面で既存集積からの分散が進むと考えられる一方、対面的なコミュニケーションが重視され、逆に既存集積が優位性を高めるという見方もある。
また、九州地方と東南アジア諸国・韓国・中国、あるいは日本海沿岸地方と韓国・中国・ロシアといった、地域ブロックと周辺諸国・地域との交流・競争・共存を中心にグローバル化が一層加速されている。
このような高度情報化、グローバル化の進展は、経済活動のみならず、国民の暮らしや土地利用、産業立地など国土構造に大きな影響を与えると考えられる。

1−2 持続可能な経済社会の構築に向けて−施策の峻別とパートナーシップ−

今日、経済が長期にわたり停滞し、社会全体に閉塞感が蔓延しているものの、我が国は人材、技術などの面で世界に誇りうる良質な資源を有するとともに、豊富な個人金融資産、安定した社会状況などを勘案すれば、我が国を取り巻く環境は必ずしも悲観的なものばかりではない。今後、安定成長による持続可能な成熟型社会を実現するために、我が国が有する潜在的な力(ポテンシャル)を最大限に発揮させる経済社会システムを構築することが必要である。
一方、国及び地方の合計で650兆円を超える長期債務残高を抱えており、少子高齢化の進展に伴う生産年齢人口の減少や社会保障関係費の増大等を勘案すれば、新たな経済社会システムの構築に向けて我々に残された時間は少なく、早急に、最も成果の出る投資や施策を峻別する経済社会システムへ改革することが必要である。
また、これまで「官」が担ってきた分野について「民」の関心が高まっており「官」と「民」のパートナーシップと「民」の自己、責任原則による、より効率的かつ透明性のある社会の構築のための環境を早急に整備することが必要である。

第2章道路整備の現状と諸環境の変化

2−1 道路整備についての現状認識

(1)経済社会の発展を支えた道路整備システム
戦後、早急に欧米先進諸国へキャッチアップするため、経済成長に対応し「人」と「物」を速く、大量に移動・輸送させる交通インフラの早期整備が不可欠であった。特に機動性に富み、ドア・ツー・ドアの移動・輸送が可能な唯一の交通機関である自動車がその利便性の高さから爆発的に普及したため、増加する自動車交通への対応、すなわち自動車のための道路整備が最優先課題であった。
欧米先進諸国が馬車交通の時代を経て19世紀後半から近代的な道路整備を進めてきたのとは対照的に、戦後、我が国の道路は国道さえ舗装されておらず極めて貧弱であり、モータリゼーションの高まりに伴う社会の要請に対応するため、早急かつ効率的に量的整備を進めることが社会全体にとって至上命題であった。
そのため、我が国では道路特定財源制度、有料道路制度、全国一律の構造基準など最も効率よく整備できるシステムを導入し、飛躍的な交通需要の増大に的確に対応し、効率的な物流や国土の有効利用を通じた経済成長の実現、生鮮食料品や宅配便の全国的な流通など国民生活の豊かさの向上、地域格差の是正に対して道路整備は大きく貢献した。
(2)一定の量的ストックの形成
戦後一貫した着実な整備の結果、国土を縦貫する高速道路は概成し、国道のほぼ100%が舗装され、約90%が大型車のすれ違いができる程度まで改良されているなど、一次的な改良という意味において一定の量的ストックは形成された。このため、道路整備の初期においては、どの地域においても、道路整備が望まれ、整備すれば必ず利用され地域に大きな効果がもたらされたが、現在では道路ストックの増大とともに、新たな道路整備の限界効果は相対的に減少してきている。
言い換えれば、これまでのような画一的な量的整備システムは、国民のより高度な質的機能に対する要請や経済状況の変化、社会システムの変化に的確に対応できなくなってきており、今後の成熟型社会においてはすべての地域にとって必ずしも最適なシステムではなくなってきていると言える。
(3)渋滞・事故・環境など残された課題
全国で年間12兆円に及ぶ経済損失を招いている都市部を中心とした慢性的な交通渋滞、年間死傷者約120万人と過去最悪を更新している交通事故、依然として厳しい状況にある沿道環境、地方部における基幹ネットワークの未整備による災害や救急医療等への対応の遅れなど、定時性、快適性、安全性、信頼性などの観点から、地域に応じた解決すべき課題は依然として存在している。また、未整備地域と整備が進んだ地域の差異が地域そのもののあり方に影響を及ぼしており、様々な活動への参画の機会均等が求められている。
特に、環状道路等ネットワークの欠落区間(ミッシングリンク)の解消は、連結によるネットワーク効果を飛躍的に増大させ、交通渋滞を大幅に低減し、沿道環境の改善に有効である。この欠落区間は、各地域において依然多数残されており、早急に解決すべき課題である。
また、戦後の道路行政は、単純な車走行空間の確保・整備から歩行者や公共交通を含む多用途の交通空間の整備へと進んできたが、今日、美しい国土や個性ある地域を担う、多機能な社会共有空間としての道路の役割を再認識することが重要になっている。

2−2 道路を取り巻く諸環境の変化

(1)産業の空洞化による対アジア競争力の低下
近年、東アジア諸国の経済成長を支えるインフラ整備はめざましいものがある。中国においては、1985年には全く整備されていなかった高速道路が、現在ではその整備延長が20,000qqに迫るなど、驚異的なスピードで高速道路整備が進められている。シンガポール、韓国、台湾などにおいても、港湾や空港について、大型コンテナ船対応の大水深岸壁の整備や国際線対応の滑走路整備を早急かつ着実に進めている。これらのインフラ整備にも支えられ、日本周辺のアジア諸国は、近年、急速に産業の国際競争力を向上させている。
一方、我が国の公共投資は生産性向上を促すインフラ整備に必ずしも重点を置いてこなかったことが一因となって地域の生産性の向上が不十分なことにもより、産業の空洞化、国際競争力の大幅な低下を招いている。今後は、高コスト構造の是正、生産性の向上、国際競争力の回復に寄与するインフラ整備に重点を置くことが必要である。
(2)地球環境・沿道環境との調和の重視
地球温暖化問題については、国際的に温室効果ガスの排出削減のための取り組みが進められており、我が国においても、すべての分野、すべての地域で取り組むべき課題である。我が国における運輸部門のCO2排出量は総排出量の約2割、うち自動車によるものは約9割を占めており、道路行政としても看過することのできない課題である。
2 また、旧自動車法の特定地域においては約5割、NO SPM NO xは約4割の測定局で環境基準を達成しておらず、それぞれの年平均値は近年概ね横這いとなっているなど、依然として沿道環境については大都市圏を中心に厳しい状況が続いており、今後の道路整備においては、環境との調和を十分に図ることが必要である。
(3)急激な都市化の収束と中山間地域の大幅な人口減少
経済成長、人口増加に伴う急激な都市化は収束し、首都圏をはじめとする大都市においては郊外への外延的拡大が終焉し、既成市街地の再生・再構築による都市の再生が注目を集めている。今後、既成市街地の居住環境の改善などが進むにつれて、都心回帰傾向に拍車がかかることが予想され、交通の質・量にも何らかの影響を与える可能性がある。一方、地方都市においては、新たな道路整備に伴う郊外立地型大型店の増加により、既成の中心市街地の空洞化が更に進行すると予想される。
また、人口減少に伴い地方中枢・中核都市から遠隔にある中山間地域では大幅な人口減少となる可能性があり、その結果、地域社会を支える基礎的サービスの維持が困難になり、国土保全に対しても大きな脅威となる恐れがある。
(4)2030年前後をピークに減少する自動車交通量に達する
バブルの崩壊後経済の低迷が続いており、2002年度はゼロ成長、2010年頃までは0.5〜2.0%程度の経済成長にとどまると予測されている。経済の低成長に加えて産業構造の変化や製造品の高付加価値化貨物車の大型化や営業車への転換により、輸送効率が高まること等の要因により、貨物車の交通量は今後一貫して減少すると予測される。
一方、2006年をピークとして人口は減少するものの、高齢者・女性を中心として免許保有や自動車保有が増大し、モビリティが高まることから、乗用車の交通量は2030年頃まで増加し、その後減少に転ずると予測される。
このため、貨物車、乗用車合計の総交通量は、2030年前後に現在よりも1〜2割増をピークに達した後、減少に転じると予測される。2050年には現在の1割増程度の水準になの。
(5)財政制約と更新投資の増大
2020年には65歳以上の人口比率が約3割に達し、15〜64歳の生産年齢人口2人で高齢者1人を支える人口構造になるなど少子高齢化は急速に進展している。
現在、既に国及び地方の合計で650兆円を超える長期債務残高を抱えており、少子高齢化の進展による生産年齢人口の減少や社会保障関係費の増大等を勘案すれば、今後、道路を始めとする社会資本整備に対する財政制約は大きい。
一方高度成長期に整備された道路構造物は全橋梁数の約40%,全トンネル数の約25%を占めており建設後50年以上経過した橋梁トンネルは10年後にはそれぞれ現在の約4倍約3倍に達するなど老朽化が今後集中的に進むこととなり、既に大規模な更新時代の入口に立たされている。
財政制約や更新投資の増大は、新規投資を制約する要因ともなるため、今後は既存道路ストックの有効活用を十分に検討した上で、適切に更新・改良していくことが必要である。

第3章道路行政についての反省と課題

3−1 投資すべきところに十分に投資しているのか

道路整備により経済の成長、生活の利便性向上が実現されてきたが、一定の量的ストックが形成されつつある現在、地域によっては道路整備の効果は以前に比べれば相対的に低下してきている。
また、道路に求めるサービスの内容も時代とともに多様化・高度化してきていることから、道路に対する国民の期待と整備効果との間に大きなギャップが生じてきている。すなわち、投資すべきところに十分に投資しているのか、投資しやすいところに投資しているのではないかという疑問である。
例えば、東京外かく環状道路など、生産性の向上、国際競争力の努力回復に資する環状道路等の整備については、社会的合意形成の遅れによりその整備が遅々として進んでおらず、大きな批判を不足浴びている。
一方で、地方中枢・中核都市から遠隔にある中山間地域では、生活の基礎となる医療、福祉、教育等の面で十分なサービスを受けられない地域も残されており、自然条件等が厳しいこれらの地域における生活のための交通の確保も十分とは言えない状況である。
また、都市構造の骨格をなす都市計画道路については、急激な都市化の進展や市街地の拡大に投資が追いつかず、整備率が5割程度にとどまっている。今後の財政制約や社会状況の変化等を勘案すれば、より一層、重点的、効率的な整備を進める必要がある。
さらに、これまでは主に渋滞解消など自動車交通への対応に重点を置いてきたが、都市部の生活道路や住宅密集地の歩道整備など、地域によっては歩行者や自転車などを優先し、沿道と一体となった生活空間として捉えた道路の整備・利用を求める声も強く、国民のニーズにきめ細かく対応した道路行政を展開する必要がある。

3−2 料金収入に過度に依存した有料道路制度の限界

有料道路制度は、戦後の資金不足の時代に、限られた公共事業費を補う補助的手段として発足した。その後、急増する交通需要に対応するため、借入金を用いた集中投資により整備促進を図る手法として拡大し道路整備の推進に大きな役割を果たしてきたこの間道路の絶対量が不足し、右肩上がりの経済状況が続いたことから、採算上も有料道路事業は成立していた。
しかし、一般道路の整備が進んだ現在、一般道路に比べ有料道路の料金に見合うメリットが低下していること、自動車交通量の伸びも鈍化してきたこと等から、現行の有料道路事業として採算がとれる地域・区間は少なくなってきており、今後、現行の有料道路制度による道路整備は、採算性を厳しくチェックし、限定的に運用すべきである。
特に、本州四国連絡道路や東京湾アクアラインについては、当初の右肩上がりの需要予測に対し、連結するネットワーク整備の遅れや周辺開発計画の誤算、経済状況の激変に伴う計画の柔軟な見直しの怠りなどもあり利用交通量が当初の計画を大きく下回っている。
その結果として採算見通しの失敗を招いたこと、同時に、これらの道路に対し、料金収入に過度に依存した整備手法を適用したことについては猛省しなければならない。
今後、同じ過ちを犯さぬように、有料道路事業を実施する場合には、国民各層の意見を十分に踏まえつつ、有料道路事業としての適格性、採算性について厳格な検討を行うとともに、交通量や金利など不確実性に対応するリスク管理手法の確立が重要である。
また、本州四国連絡道路等の過去の事業に伴い発生した有利子負債について、将来の国民負担を軽減するため、一刻も早く処理することが必要である。

3−3 公共事業の効率性に対する批判や不信感

公共事業に関連した談合問題や不祥事が度々生じていることから、国民の間に公共事業全般に対し大きな不信感があることは否めない。さらに、高い事業コスト、プロジェクト実施期間の大幅遅延など時間管理の甘さ、不透明な発注システム、経済社会の変化に即応して見直しがされないといった柔軟性の欠如など、公共事業の効率性に対しても多くの疑問が投げかけられているが、公共事業を実施する主体がこれらに対する説明責任を十分に果たしているとは言い難い。
これらの批判や不信感は公共事業全般に対するものであるが、道路は生活に最も密着し、国民が日常的に利用する身近なインフラであり、公共事業の代表と見なされている道路行政が率先してこれらの批判や不信感に真摯に耳を傾け率直に反省しなければならない

3−4 「使う」観点の軽視

量的不足の解消のため、これまで道路を「造る」ことに重点を置き、完成した道路を有効に「使う」観点を軽視してきたため、違法路上駐停車や路上工事、あるいは信号制御の問題などにより、つくられた道路の機能が最大限に発揮されているとは言い難い状況にある。
例えば、違法路上駐停車の集中的な排除は、新たな車線を追加することと同等の効果があり、新規投資なしに道路交通の効率化が図られる可能性がある。現実的な問題として、駐車場の不足によりやむを得ず違法路上駐停車をしている場合もあること、地域特性や交通特性によっては一時的な駐停車を認めてもよい道路もあると考えられることから、路上駐停車の規制については、道路の役割や機能に応じて柔軟に見直すことが必要である。その上で、渋滞を引き起こす違法路上駐停車については徹底的に排除すべきである。
また信号制御についてネットワーク全体の円滑な交通の確保さらには環境負荷の軽減といった観点から最も有効な運用が図られるよう、道路交通管理の面においても改善すべき点がある。
これらの既存道路の有効活用については、公安委員会や沿道関係者との協力・連携が不可欠である。そのため、各地域において道路管理者、公安委員会及び沿道関係者が連絡調整・連携強化を図る場を設け、効率的な道路の使い方の実現を図る必要がある。
今後は、既存道路の使われ方を検証し、その有効活用を十分に図りつつ、真に必要な新規投資を無駄なくスピーディーに行うことが必要である。

第4章道路行政の改革の基本的方向

4−1 道路行政の使命

豊かな暮らしとこれを支える活力ある経済社会を実現し、美しく安全で持続可能な誇りの持てる国づくりという究極の目的を果たすため、国土を有効活用・適正管理し、安全で効率的に利用できる国土形成を実現するハード・ソフトのインフラ整備が必要である。特に道路は国民の日常生活から経済活動に至るまで、すべての経済社会活動に密接不可分な最も基礎的なインフラであり、道路の持つ機能を最大限に発揮させることが道路行政としての使命である。

4−2 3つの政策目標

豊かな暮らしとこれを支える活力ある経済社会を実現し、美しく安全で持続可能な誇りの持てる国づくりを実現するため、以下の3つの観点から道路として提供すべきサービスの検討を進める必要がある。
(3つの政策目標)
@安全で安心できる質の高い暮らしの実現
A都市の再生と地域の連携による経済活力の回復
B環境の保全・創造

4−3 行政システムの改革

(1)基本的視点
(道路ユーザーが満足する道路行政への転換)
道路は自動車のためだけのものではない。我が国に居住する人々はすべて、歩行者、自転車利用者、公共交通利用者、沿道住民、沿道空間利用者など何らかの形で道路と関係しており、1億3,000万人すべてが道路ユーザーと言ってもよい。これまでは、自動車を優先した「台」で数える道路行政であったが、今後は、人間や地域の尊厳、多様性、自主性を重視し、すべての道路ユーザーである「人」が満足する道路行政へ転換することが必要である。
このため「道路が提供できるサービスは何か「サービスを提供」することにより何が実現されるのか」を常に意識し、自ら提供しているサービスレベルの現状とユーザーの満足度について常に把握し、道路行政に還元(フィードバック)することが必要である。その上で、道路の機能・役割をユーザー満足度の観点からのサービス体系として再構築することが必要である。
(成果重視で新たな発展を目指す10年の実現)
財政制約など我が国の経済社会を取り巻く環境を考えれば、我々に残された時間は少なく、安定した社会状況にある今、人材や技術力などの良質な資源を活用しつつ、成熟型社会において最低限必要な道路整備を早急に行わなければならない。また、マクロ経済の面でも、我が国経済のバランスシート不況を克服する観点、及び現在の超低金利時代における投資は将来世代の負担も少なくてすむという観点から、真に必要な公共事業を行う歴史的なチャンスであるとも言える。
その際、事業量確保のための道路整備ではなく、道路が提供するサービスにより実現される成果(アウトカム)を重視した道路行政に転換することが重要である。この求められる成果(アウトカム)は、地域特性、交通特性、道路機能等により異なることから、政策目標を明確にした上で評価するシステムを構築することが重要である。
アウトカム指標に基づく成果を重視した評価システムを導入し、効率的かつ集中的な投資を行うことにより、早急に生産性の向上、国際競争力の回復、生活の質の向上など新たな発展を目指す10年を実現すべきである。
(地域・都市構造の強化の支援)
人口減少下にあっては、市町村といった既存の行政区域内にすべての公共施設を整備することはより高度なサービスの提供の観点あるいは効率性・採算性の観点から難しく、生活に必要な基礎的サービスを維持するためには、既存の行政区域を越えた都市圏・生活圏を構築、連携を強化し相互補完することが必要である。また、各地域が成長著しいアジアなどと交流、競争、共存し得る自立した地域ブロック圏を形成するためには、都市圏の連携を強化するネットワークが必要である。
さらに、美しく品格のある景観や環境の創造、大規模災害への備え、ライフライン・情報通信網の充実などにおいて、道路の空間機能を十分に活用し、美しさと強さを兼ね備えた国土構造の形成を図ることが必要である。
(2)改革の方向
(評価システムによる峻別と集中的重点整備)
道路ユーザーのニーズを的確に把握し、最も成果のある新規投資を厳格に峻別し集中的に実施することが重要である。そのため、地域特性、交通特性、道路機能等に応じた、政策目標を明確に表すアウトカム指標を導入した評価システムを確立することが必要である。また、集中投資期間の設定と重点整備事業の峻別による集中的重点整備の実施が重要である。
道路特定財源制度は受益と負担の関係に基づくものであり、そのあり方について納税者の納得が得られるような見直しを行いつつ、必要な道路整備を実施するため、これを活用していくことが必要である。
(既存ストックの有効活用・効率化)
課題解決にあたっては、まず第一に、既存ストックが有効に活用されているかどうか十分に検証し、既存ストックの改良(ハード)あるいはその使い方の工夫(ソフト)による対応を図ることが必要である。
特に高速道路をはじめとする有料道路については、近年のデフレ傾向とも相まって料金の割高感が高まってきており、物流コストの低減、モビリティの向上、環境改善等の観点から、多様で弾力的な料金施策によりその利用促進を図る必要がある。
また、一般幹線道路について、違法路上駐停車の排除や効率的な道路交通管理などにより、道路の持つ機能を最大限に発揮させる必要がある。
既存ストックの有効活用を十分に図りつつ新規投資については地域特性に応じた成果の高い事業を峻別し、集中的に実施することが必要であるがその際地域特性に応じた柔軟な道路構造の採用時間管理手法の導入による整備スピードのアップ、新たな技術開発などによる徹底したコスト縮減を図り、効率的な道路整備・管理を進める必要がある。
( 公」の意識に基づく新たなパートナーシップの確立)
道路という極めて「公」的なインフラを最大限に活用し、道路ユーザーという「私」の生活を豊かにするため、個人や地域が本来持っている「公」の意識を引き出すことが必要である。そのため、徹底した情報公開により情報を共有し、説明責任を果たした上で「公」の意識による参画と責任の共有を実現すること、が重要である。なお、この参画と責任の共有に基づく健全な公益実現のためには、私的な欲求がある程度制限される場合もあることについて十分に国民に理解を求めるべきである。官と民、国と地方、異なる行政分野間などにおいて、規制緩和、民営化、地方分権の潮流を踏まえ、新たなパートナーシップを確立し緊密な協調関係を築くことが必要である。
さらに、都市計画や土地利用計画など他の計画、農道・林道・臨港道路など他の行政分野、鉄道・空港・港湾・バス・地下鉄など他の交通機関等については道路と密接不可分な関係にあることからこれらとの連携強化について、道路行政が積極的に取り組んでいくことが必要である。
また、道路と沿道地域は相互に影響を及ぼし合っており、道路の利用者・関係者も多岐にわたる。道路は国民共有の貴重な財産という認識に立ち、沿道地域と一体となって、道路の使い方や沿道景観形成に係る施策を進めなければならない。

第II部道路行政の改革のための具体的提言

第5章3つの政策目標の実現

5−1 安全で安心できる質の高い暮らしの実現

(1)安全な生活環境の確保
我が国の道路では、依然として事故発生率が高く、国際的に見ても高水準にあり、道路交通の安全を取り巻く環境は極めて厳しい状況にある。これを改善するため、幹線道路の事故危険箇所での集中的な対策を進めるとともに、徒歩圏における歩行者等の安全対策を集中的かつ総合的に推進すべきである。また、雪国においては積雪や凍結等による冬期の交通障害への対策を進めるべきである。
(2)歩行者・自転車を重視し、生活環境の改善に資する道路整備の推進
住宅地などの生活道路については車よりも歩行者や自転車の安全・快適な利用を優先すべきであり、速度規制やハンプの設置等により通過車両の排除を徹底するとともに、沿道と協働した緑化、無電柱化を行い、より質の高い生活環境を創出するゾーン対策を推進しなければならない。
また、高齢者を含む誰もが快適に移動できる歩行環境を形成するため、幅の広い歩道の設置、既設歩道の段差・勾配の改善に加え、道の広場など「たまり」空間の確保にも配慮した歩行空間のバリアフリ−化を積極的に推進すべきである。
(3)災害や救急医療等緊急時への備え
豪雨等による孤立地域の解消や救急医療施設へのアクセスの確保及び大規模災害時における緊急救援ルートなどの重要な役割を担う道路において、豪雨・地震に対する信頼性・安定性の向上を図り、リダンダンシーの高い道路ネットワークの構築を図ることは地域の安全や暮らしの安心を守るため極めて重要である。
(4)密集市街地の解消に資する都市計画道路の整備の推進
木造老朽家屋が密集している市街地において、通過交通の排除による生活道路の機能回復、延焼遮断帯や避難路の確保による防災性の向上など、生活の質の向上や良好な市街地形成に資する都市計画道路の整備を推進すべきである。
(5)沿道空間との協働によるまちの賑わいの創出や美しいまちなみの形成
まちの中心部において、賑わいを創出するため、一般自動車の利用制限と路面電車等公共交通の活用によるトランジット・モール化を進め、歩行者や自転車の安全かつ快適な移動空間を確保するとともに、オープンカフェ、ストリートパフォーマンス等の公共空間の新しい活用を進める必要がある。
(6)更新時代への対応
高度成長期に多数建設された道路構造物の更新時期を平準化するため点検から補修に至る管理の高度化による既設構造物の延命化,新設構造物の長寿命化を図るとともに、そのために必要な技術開発を推進すべきである。また、維持管理に係るトータルコストの縮減を図るため、道路資産の効率的・計画的な維持管理を図るアセットマネジメントシステムの導入を進める必要がある。さらに、道路の構造を保全するため、特殊車両許可制度の厳格な運用を図ることが必要である。

5−2 都市の再生と地域の連携による経済活力の回復

(1)道路の機能分化と既存道路の有効活用による渋滞の解消
環状道路などネットワークの未整備や違法路上駐停車などによる道路の非効率な使い方などにより「車」の円滑な移動が主目的の、自動車専用道路や幹線道路がその役割を十分に果たしていないため、本来歩行者や自転車利用者など「人」中心の使われ方となるべき生活道路に渋滞を回避するための通過交通が入り込んでおり、これらが道路交通の円滑化、安全性の確保、環境の改善などの面において様々な問題を引き起こしている。
このため、自動車専用道路、幹線道路、生活道路の機能分化を徹底し、既存ネットワークを最大限に機能させる環状道路等の整備を重点的に推進するとともに、違法路上駐停車の排除等による既存幹線道路の有効活用の徹底、時間帯別料金の設定など都市部の高速道路の利用高度化のための料金施策の導入を図るべきである。
(2)民間の建築活動の誘発など都市再生に資する道路の重点整備と都市計画道路の見直し
都市内の道路は、都市の貴重な公共空間として、交通機能だけでなく都市の骨格を形成し、沿道土地利用の誘発、防災性の向上、都市環境の改善等の幅広い機能を有する。そのため民間の建築活動を誘発する効果の高い地区における道路の整備や、都市拠点の形成、電線類の地中化、中心市街地の活性化に資する道路の整備など既成市街地の再生に資する道路整備を重点的に推進すべきである。
その際、概成済みの道路については、少ない投資で完成させることが可能でその整備効果も高いことから、重点的な整備により早期完成を図るべきである。あわせて、都市計画道路について、今後の都市を取り巻く状況の変化や目指すべき将来の都市像に的確に対応するよう、都市計画道路の追加、廃止、現状維持など必要な見直しを早期に実施する必要がある。
(3)都市部における総合的な交通システムの構築
大都市部においては、特に地下鉄など軌道系公共交通機関の整備が進んでいることから、これらの交通機関と道路交通との適切な役割分担により交通の円滑化を図ることが現実的である。そのため、各交通機関間の乗り継ぎの円滑化、道路と補完・代替関係にある公?自動車交通需要の調整・抑制を図る交共交通機関整備の支援強化など、道路行政として、通需要マネジメント( )施策の展開TDM総合的な交通システムの構築に積極的に取り組むべきである。
また、中小都市部においては、バス交通が公共交通の中心となっていることから、バス交通の走行環境改善や利用環境改善に積極的に取り組むべきである。
(4)連携を重視した地域ブロック圏・地域生活圏形成の支援
生活に必要な基礎的サービスの格差を是正し、連携型地域構造の確立による自立した地方圏を形成するため、公共施設等の拠点を連絡する道路整備により市町村合併を支援する。さらに、地域の主体性と選択に基づき市町村間で役割分担し、圏域全体の各種サービスを確保するための道路整備を進めなければならない。
また、個々人の移動が多様化し、行動範囲が拡大するなか、通勤・通学・買物・医療・福祉などの日常的な活動圏に着目し、安心・安全・定住のための地方の生活ネットワークを確保する道路整備を推進するとともに、高齢者等が利用しやすいマルチモーダルな交通体系を構築する必要がある。これからは道路計画と土地利用計画等その他の計画と総合的・合理的な調整を図るとともに、地域の住民が等との地域づくりNPO活動を通じて、道路の使い方や道路整備のあり方について考えることが大切である。
(5)地域のモビリティの向上
地方部において高いモビリティを確保する自動車専用道路を有効活用することにより、地域の生活を充実させ、広域的な生活圏の確保や地域行政の広域連携を支援するとともに、物流の効率化、交通安全性の向上、環境負荷の軽減を進める必要がある。
そのため、構造基準の柔軟な運用や緩和など、地域の実情に応じた最適な構造の採用による適正な規模・規格でのネットワークの充実を図るとともに、インターチェンジ整備コスト及び料金収受コストを大幅に削減できるを活用したインターチェンジの追加にETCより、インターチェンジ間隔の縮小を図り、地域にとって利便性が高いネットワークを形成すべきである。
また、その地域や区間の特性に応じ、料金値下げや各種割引制度など、一般道路からの転換を目的とした多様で弾力的な料金施策を導入し、自動車専用道路の利用の拡大を図る必要がある。
(6)物流の効率化・情報化への対応
物流コストの一層の低減を図るため、空港・港湾等の拠点と高規格幹線道路等とのアクセス道路の重点的な整備などにより、物流の効率化を推進すべきである。
ETC ITS また、技術の活用等による道路交通サービスの高度化、に関連する新たな産業創出の支援、情報化によるアカウンタビリティの向上と道路行政の効率化・迅速化などを効率的に進めるために、共通的な基盤の構築(統合化、標準化)を考慮した道路の情報化(スマートウェイ化)を積極的に推進すべきである。

5−3 環境の保全・創造

(1)地球温暖化の防止
自動車からのの排出量の削減、地球温暖化の防止にも有効CO 2な環状道路・バイパス等の幹線道路ネットワークの整備、交差点立体化等のボトルネック対策、路上工事の縮減等による交通の分散・円滑化を積極的に推進すべきである。
また、自動車利用者と地域が主体となり、自動車交通需要の削減につながる交通需要マネジメント(TDM )施策に本格的に取り組むとともに、多様で弾力的な料金施策による自動車交通需要の調整・抑制を可能とするの普及を積極的に支援すべきである。ETC
さらに、自動車の低燃費化の促進等、地球温暖化の防止に資する技術開発に積極的に取り組む必要がある。
(2)沿道環境の改善
自動車からのNO PM x・の排出量を削減し、沿道の大気環境の改善・保全を図るため、低公害車の開発等の技術開発に積極的に取り組むとともに、沿道の大気環境の厳しい道路の自動車交通量を抑制するため、環境ロードプライシング等の有料道路の料金施策の活用も含めた自動車交通需要の調整・抑制策を推進すべきである。
(3)自然環境の保全・創造
豊かな街路樹など地域の顔ともなり得る「緑」を持った良質な道路空間を創り出すとともに、のり面緑化や地形の改変を最小限に抑える工法の採用等、自然環境や多様な生態系に配慮した道路整備を推進すべきである。

第6章行政システムの改革

6−1 評価システムによる峻別

(1)峻別のための評価システムの導入
3つの政策目標を実現するため、渋滞の解消、生活の安全・安心の確保、都市の再生、交通事故の低減、環境の改善などに資する成果の高い施策・事業を峻別することが重要である。このため、施策・事業の成果を反映する指標(アウトカム指標)による評価システムを行政運営へ組み込み(ビルトイン、効率的かつ効果的な事業)執行に努めなければならない。この際、施策・事業による成果を明確に表すわかりやすいアウトカム指標の導入が重要である。
(2)事業評価の充実
新規採択時から事業完了後までの一貫した事業評価を引き続き実施し、より効率的かつ効果的な事業執行に努めなければならない。また、現在の費用便益分析ではとらえられていない環境、住民生活などの評価項目を多元的に取り込み、総合的な評価を定量的に実施する手法も実現しなければならない。
(3)施策評価の充実
道路行政を、アウトカム指標に基づき運営を行う方式に転換し、毎年度、指標に基づき業績の分析・評価を行い、その結果を予算編成等に適切に反映させるシステムを構築すべきである。

6−2 集中的重点整備の実施

(1)集中投資期間の設定
2006年をピークに人口減少局面に入り、本格的な少子高齢社会が到来すること、2010〜2015年頃にかけ、これまでの労働人口の中核(いわゆるベビーブーム世代)が年金受給者になること、高度成長期に整備された道路構造物の老朽化が10年後から集中的に進むことなどを考慮すると、2010年代初頭までに成熟型社会において最低限必要な道路整備に目途をつけなければならない。そのため、今後10〜15年を目途とした集中投資期間を設定し、集中的な投資を実施すべきである。
(2)重点整備事業の峻別
3つの政策目標の実現に資する事業を、効率的かつ集中的に進めなければならない。
例えば、都市圏の環状道路や連首都圏の3環状道路を始めとする続立体交差事業など渋滞解消に資する事業、生活の安全・安心を確保する基礎的なネットワーク、鉄道駅等交通結節点の改善など総合的な交通体系の確立を図る事業、民間建築活動の誘発効果の高い都市計画道路など、成果の高い事業を峻別し重点的に整備を進めるべきである。
(3)道路特定財源の活用
道路の主たる利用者である自動車利用者が道路整備費を負担する道路特定財源制度は、受益者負担の考え方に基づく合理的な制度である。一定の量的ストックが形成された中で、必要な道路整備を重点的に実施するため、そのあり方について納税者の納得が得られるような見直しを行いつつ、これを活用することが必要である。

6−3 有料道路制度の見直し等

有料道路制度の見直しを行うにあたり、まず有料道路の事業主体である道路関係四公団については、特殊法人等整理合理化計画の中で、新たな組織及びその採算性の確保が道路関係四公団民営化推進委員会において一体として検討されることとされており、この委員会の結論を踏まえ、必要な施策を具体化することが必要である。また、その他の有料道路制度の見直しについても、この委員会における結論を踏まえつつ、以下の点について早急に結論を得るべきである。
(1)有料道路制度の限定的運用
現行の有料道路制度の適用については、厳格な採算性の検討を行い、適正水準の料金に基づく収入で費用を賄うことが可能で、早期整備という目的にも十分合致し、かつ、それについて利用者の理解も得られる路線に限定すべきである。なお、今後の有料道路事業においては、公的負担のあり方について更なる検討を行う必要がある。
(2)多様で弾力的な料金施策の導入
利用者の様々なニーズに対応するとともに、沿道環境の改善や渋滞解消などの課題を解決するとともに、利用の少ない有料道路の有効活用を図るために、全国一律の料金を見直し、多様で弾力的な料金施策を導入すべきである。
(環境改善、渋滞対策、交通安全等の観点からの料金施策)
現在、首都高速道路及び阪神高速道路において、並行する有料道路間において料金格差を設け、住宅地域に集中した交通を湾岸部に転換させ沿道環境の改善を図る環境ロードプライシングを試行しているが、今後はこのような施策を拡大し、環境改善、渋滞対策、交通安全等の政策的観点から料金設定の弾力化を図る必要がある。
また、大都市圏等の混雑している有料道路においては、時間帯別に料金を変化させることにより、交通需要の平準化を図り渋滞を緩和することを検討すべきである。
(道路ストックの有効活用のための値下げや割引制度)
安全で安心できる生活道路の確保と地域のモビリティの向上のため、非混雑区間においては、一般道路から交通を転換させ既存有料道路ストックを最大限活用することが必要であり、有料道路利用者の受益実感も考慮し、値下げや割引等の導入により転換を促進することについて検討すべきである。
(ETCの更なる活用)
ロードプライシングの実施による交通需要の調整、均一料金制を採用している有料道路における短区間割引の導入、有料道路間の乗り継ぎ割引等、を活用した多様な料金施策を展ETC開し、有料道路利用者へのきめ細かなサービスを推進しなければならない。また、普及促進策を合わせて実施するとともに、偽造ETCが社会問題化しているハイウェイカードや回数券を廃止し、割引策をによるものに早期に集約すべきである。ETC
(3)有利子負債の早期処理
本州四国連絡道路は、管理費を上回る収入があるものの、利払いが収入を超えている状況にある。公団の民営化に向けて、また、将来の国民負担を軽減する観点からも、早期に有利子負債を圧縮するとともに道路関係四公団民営化推進委員会の検討結果を踏まえて確実な償還が図られるよう抜本的な債務処理を早急に行うべきである。

6−4 既存ストックの有効活用

(1)多様で弾力的な料金施策の導入(再掲)(6−3(2)参照)
(2)道路の使い方の見直し
違法路上駐停車の集中的な排除は、新たな車線を追加するのと同等の効果があり、新規投資なしに道路交通の効率化が図れる可能性を持つ。そのため、交差点付近、主要幹線道路などについては、停車も含めた駐停車禁止区域を意味するレッドゾーンに指定し、徹底的な取締りを実施する必要がある。レッドゾーンの設定は、公平かつ必要最小限とすべきであり、その他の区間については、路上駐停車の規制を地域特性や交通特性に応じて柔軟に見直すべきである。
また信号制御についてネットワーク全体の円滑な交通の確保さらには環境負荷の軽減といった観点から最も有効な運用が図られるよう、時々刻々変わる交通動態の収集分析に基づく高度な交通管理システムの整備・導入を推進する必要がある。違法路上駐停車の排除や信号制御など道路交通の管理については、公安委員会や沿道関係者との協力・連携が不可欠である。各地域において道路管理者、公安委員会及び沿道関係者が連絡調整・連携強化を図る常設的な場を設け、効率的な道路の使い方を実現すべきである。
(3)路上工事の徹底合理化
掘削規制区間の拡大、面的集中工事の実施、規制日数を縮減する施工方法の採用、共同溝整備の推進等を通じて、路上工事に伴う交通規制日数の縮減を図らなければならない。
また、路上工事による渋滞を未然に防止するため、各種媒体を通じた路上工事情報の提供や各道路管理者のホームページの連携等、路上工事情報提供の充実を図らなければならない。
(4)道路の情報化の推進
既存の道路ネットワークを有効に活用し安全かつ円滑な道路交通を確保するため、等によるリアルタイムな道路交通情報の提VICS供、技術を活用した多様なサービスの展開、を活用した道ETC IT路管理の効率化などの道路の情報化を積極的に推進する。

6−5 コスト縮減・技術開発

(1)地域に応じた柔軟な道路構造
整備効果の早期発現・整備コストの縮減等を図るため、全国一律の道路構造基準から、例えば、将来も交通量が少ないと見込まれる高規格幹線道路において追越区間付き2車線構造を導入することや、中山間地域における道路の改築について地域の実情に応じた最適な構造とするなど地域に応じたローカルルールの採用を推進すべきである。
(2)整備効果早期発現のための時間管理手法の導入
財政の更なる悪化など様々な制約のもと、限られた資源を有効に活用するため、これまで以上に効率的・重点的な投資を行う必要がある。そのため、時間管理概念を導入し、供用目標など5年後の姿を提示した上で、毎年進捗状況を確認することにより、事業の進捗管理を徹底しなければならない。その際、整備効果の早期発現のための構造見直しなど、事業進行中の箇所においても更なる早期供用に向けた努力を進めなければならない。
(3)技術開発の積極的な推進
効率的な道路整備・管理を進めるため、工期短縮などコスト縮減のための技術開発やを活用した道路の利用に関する技術開発、ITS更新時代に対応するための道路構造物の長寿命化技術の開発などを積極的に進めなければならない。

6−6 ユーザーの視点に立った開かれた行政運営

(1)道路ユーザーの参加による既存道路管理手法(道路パフォーマンスマネジメント)の導入」
「公」と「私」のパートナーシップ型の道路管理を実現し、既存道路の課題の発見・改善と道路整備に対するニーズを明確化するため、道路ユーザーと道路管理者などからなる協働の場の結成等、道路ユーザーの意見を把握し反映する仕組みを整備し、路線機能や地域特性に応じた道路管理計画を策定・実施・モニタリングする「道路パフォーマンスマネジメント」を実施すべきである。
(2)市民参画型道路計画プロセス(PI:パブリックインボルブメントの導入)
構想段階における計画決定手続きの透明性、客観性、公正さを確保するため、時間的効率性も十分考慮しつつ、計画の早い段階から第三者等の関与による市民等との双方向コミュニケーション等を行う市民参画型道路計画プロセス(PI:パブリックインボルブメント)を導入すべきである。
(3)PFIの活用
民間の資金や経営ノウハウを活用して公共施設の整備を推進するについては、その趣旨に鑑み、メリットが十分発揮できる分野PFIを中心に導入を推進する必要がある。その際、我が国の実状を踏まえ、適用範囲、官民のリスク分担、民間のインセンティブ付与のあり方等について検討し、官民の適切な役割分担と民間活力の積極的導入を図るべきである。
(4 「公」の意識に基づく新たなパートナーシップの確立)
道路は極めて公共性の高いインフラであり、関係者も多岐に渡ることから、ルートや事業手法等の調整に時間を要し、結果として、時間的、経済的損失を招いているケースも見受けられる。
このため、徹底した情報公開を進め行政としての説明責任を果たした上で、関係者が「公」の意識に基づき参画し行政と責任を共有することにより場合によっては公益が優先されることも認識した新たなパートナーシップを確立する必要がある。

(参考)基本政策部会検討経緯

第1回基本政策部会(3月5日)
・部会長の選任
・部会の運営について
・議論の方向について
第2回基本政策部会(3月27日)
・生活の質を高める道路のあり方について
第3回基本政策部会(4月9日)
・経済活力を高める道路のあり方について
第4回基本政策部会(4月23日)
・地域の魅力を育てる道路のあり方について
第5回基本政策部会(5月13日)
・安全を守る、環境を保つ道路のあり方について
・有識者ヒアリング
第6回基本政策部会(5月22日)
・道路整備の進め方の改革について
第7回基本政策部会(6月7日)
・論点整理
第8回基本政策部会(6月24日)
・中間報告(案)骨子
第9回基本政策部会(7月2日)
・中間報告(案)
第10回基本政策部会(7月19日)
・中間報告(案)とりまとめ


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