自転車社会学会

中間答申「今,転換のとき」を読んで

国土交通省の諮問機関である道路分科会の中間報告「今、転換のとき〜よりよい暮らし・経済・環境のために〜」を読んで・・・・赤字は中間報告の内容,黒字は私のコメント。概ね同意しますが・・・・・細かい点ではいくつかコメントが。

はじめに

議論を始めるにあたり、本部会における議論の進め方から改革すべきと考えた。従来の審議会にありがちとされる密室性を排除し、議事を完全公開するなどオープンな形で会議を運営することとした。また、行政側からの提案を追認するような形ではなく、各界、各地域からの幅広い意見を取り入れつつ、委員から提出された提案ペーパーを中心として議論を進めることとした。

中間報告においてもこの姿勢を維持していることは高く評価したい。報告書はどの部分がどの委員のペーパーに基づく内容なのかなあ。

第I部現状認識及び基本的方向
第1章経済社会についての現状認識
1−1 欧米へのキャッチアップから成熟型社会へ

現状認識に大きな差はありませんね。

1−2 持続可能な経済社会の構築に向けて−施策の峻別とパートナーシップ−

これまで「官」が担ってきた分野について「民」の関心が高まっており「官」と「民」のパートナーシップと「民」の自己責任原則による、より効率的かつ透明性のある社会の構築のための環境を早急に整備することが必要である。

これはNPO活動のことを指しているのだろうか?。もっと具体的に書けばわかりやすく,説得力がある報告書になるのに・・・・・。

第2章道路整備の現状と諸環境の変化
2−1 道路整備についての現状認識

(1)経済社会の発展を支えた道路整備システム
(2)一定の量的ストックの形成
これまでのような画一的な量的整備システムは、国民のより高度な質的機能に対する要請や経済状況の変化、社会システムの変化に的確に対応できなくなってきており、今後の成熟型社会においてはすべての地域にとって必ずしも最適なシステムではなくなってきていると言える。

拝承。

(3)渋滞・事故・環境など残された課題
全国で年間12兆円に及ぶ経済損失を招いている都市部を中心とした慢性的な交通渋滞、年間死傷者約120万人と過去最悪を更新している交通事故、依然として厳しい状況にある沿道環境、地方部における基幹ネットワークの未整備による災害や救急医療等への対応の遅れなど、定時性、快適性、安全性、信頼性などの観点から、地域に応じた解決すべき課題は依然として存在している。

課題として交通渋滞,交通事故,沿道環境,地方の基幹ネットワークの未整備が上げられている。基幹ネットワークって高速(有料)道路網のことですよね。作っても元がとれない道路,つまり需要のない道路を整備するのではないですよね。元がとれる(十分な需要のある)道路が未整備のまま残されている,という意味ですね。

2−2 道路を取り巻く諸環境の変化

(1)産業の空洞化による対アジア競争力の低下
(2)地球環境・沿道環境との調和の重視
(3)急激な都市化の収束と中山間地域の大幅な人口減少
(4)2030年前後をピークに達する自動車交通量
(5)財政制約と更新投資の増大

何を取りあげるかは人それぞれですね。

第3章道路行政についての反省と課題

3−1 投資すべきところに十分に投資しているのか

これまでは主に渋滞解消など自動車交通への対応に重点を置いてきたが、都市部の生活道路や住宅密集地の歩道整備など、地域によっては歩行者や自転車などを優先し、沿道と一体となった生活空間として捉えた道路の整備・利用を求める声も強く、国民のニーズにきめ細かく対応した道路行政を展開する必要がある。

パチパチパチパチ・・・・・(^-^)。

3−2 料金収入に過度に依存した有料道路制度の限界
3−3 公共事業の効率性に対する批判や不信感
3−4 「使う」観点の軽視

道路を「造る」ことに重点を置き、完成した道路を有効に「使う」観点を軽視してきたため、違法路上駐停車や路上工事、あるいは信号制御の問題などにより、つくられた道路の機能が最大限に発揮されているとは言い難い状況にある。

道路行政もやっと世間並み(顧客を向いて仕事をする)になったといえる。ただ,顧客って誰?なのかが立場により異なることだろう。

既存道路の有効活用については、公安委員会や沿道関係者との協力・連携が不可欠である。そのため、各地域において道路管理者、公安委員会及び沿道関係者が連絡調整・連携強化を図る場を設け、効率的な道路の使い方の実現を図る必要がある。

一般論としては必要なことだが,国土交通省が公安委員会(警察)や沿道関係者(自治体?組織化されている市民団体?)と連絡調整・連携強化していけるかどうか・・・・国土交通省として調整・連携にメリット(やる気・必要性)があるだろうか?。国土交通省に期待するのは無理かもしれない。

第4章道路行政の改革の基本的方向
4−1 道路行政の使命
4−2 3つの政策目標

豊かな暮らしとこれを支える活力ある経済社会を実現し、美しく安全で持続可能な誇りの持てる国づくりを実現するため、以下の3つの観点から道路として提供すべきサービスの検討を進める必要がある。
(3つの政策目標)
(1)安全で安心できる質の高い暮らしの実現
(2)都市の再生と地域の連携による経済活力の回復
(3)環境の保全・創造

この3つがなぜ出てきた(選ばれた)のか説明不足ではないだろうか。4−2の3つの政策目標は第2章道路整備の現状と諸環境の変化への対策として,4−3の行政システムの改革は第3章道路行政についての反省と課題への対策として出てきたものだろう。4−3は仕事の仕方(システム,意志決定のプロセス,どの組織がどのように責任と権限を分担して意志決定を行うのか)についての対策である。4−2はそのシステムの上でどの方向に向かって意志決定をしていくか?を記述している。

私の常識ではシステムが先(4−2と4−3の順番が逆)なのだが。意志決定の方向はシステム上で権限と責任を分担する組織・または個人が決めることであり報告書が拘束すべきものではないと思うのだが・・・・きっと書きたい委員さんがいたのでしょうね。方向性を示すことは悪いことではありませんし。3つの政策目標と第2章道路整備の現状と諸環境の変化との対応をみてみましょう。

2−1 道路整備についての現状認識
(1)経済社会の発展を支えた道路整備システム→?
(2)一定の量的ストックの形成→?
(3)渋滞・事故・環境など残された課題
・渋滞→(2)都市の再生と地域の連携による経済活力の回復
・事故→(1)安全で安心できる質の高い暮らしの実現
・環境→(3)環境の保全・創造
2−2 道路を取り巻く諸環境の変化
(1)産業の空洞化による対アジア競争力の低下→(2)都市の再生と地域の連携による経済活力の回復
(2)地球環境・沿道環境との調和の重視→(3)環境の保全・創造
(3)急激な都市化の収束と中山間地域の大幅な人口減少→?
(4)2030年前後をピークに達する自動車交通量→?
(5)財政制約と更新投資の増大→?

あまり明確な対応はありませんね。現状認識と政策目標との整合性は意識されなかったようです。原因を明確にしないで(それとは別に)対策を立案するのでは,先に結論ありきと疑われてしまいます。

4−3 行政システムの改革

(1)基本的視点
(道路ユーザーが満足する道路行政への転換)
これまでは、自動車を優先した「台」で数える道路行政であったが、今後は、人間や地域の尊厳、多様性、自主性を重視し、すべての道路ユーザーである「人」が満足する道路行政へ転換することが必要である。
道路の機能・役割をユーザー満足度の観点からのサービス体系として再構築することが必要である。

パチパチパチ・・・・・

(成果重視で新たな発展を目指す10年の実現)
事業量確保のための道路整備ではなく、道路が提供するサービスにより実現される成果(アウトカム)を重視した道路行政に転換することが重要である。この求められる成果(アウトカム)は、地域特性、交通特性、道路機能等により異なることから、政策目標を明確にした上で評価するシステムを構築することが重要である。

ちゃんとフィードバック(悪い点は次の事業では直す)の効いた仕事をしましょうという当たり前のことですね。こうして記載しなければならないのが・・・ちょっと悲しいですね。

(地域・都市構造の強化の支援)
(2)改革の方向
(評価システムによる峻別と集中的重点整備)
道路ユーザーのニーズを的確に把握し、最も成果のある新規投資を厳格に峻別し集中的に実施することが重要である。

前述。顧客ニーズに合った仕事をしましょうということですね。

また、集中投資期間の設定と重点整備事業の峻別による集中的重点整備の実施が重要である。

はて?なぜ重要なのでしょう?。理由を書いてもらわないと一般国民には理解できません。

(既存ストックの有効活用・効率化)
高速道路をはじめとする有料道路」と「違法路上駐停車の排除や効率的な道路交通管理」が上げられていますね。特に異論はありません。

( 公」の意識に基づく新たなパートナーシップの確立)
個人や地域が本来持っている「公」の意識を引き出すことが必要である。」と「農道・林道・臨港道路など他の行政分野鉄道・空港・港湾・バス・地下鉄など他の交通機関等については道路と密接不可分な関係にあることからこれらとの連携強化について、道路行政が積極的に取り組んでいくことが必要である。」が上げられていますね。異論はありません。道路行政が他の行政分野,他の交通機関(これは国土交通省になったから少しはやりやすいかな?)とどのように連携強化を行っていくのか?具体策が明示されるといいのですが。第3章道路行政についての反省と課題との対応をみてみましょう。

3−1 投資すべきところに十分に投資しているのか→4−3 行政システムの改革(2)(評価システムによる峻別と集中的重点整備)
3−2 料金収入に過度に依存した有料道路制度の限界→4−3 行政システムの改革(2)(既存ストックの有効活用・効率化)
3−3 公共事業の効率性に対する批判や不信感→4−3 行政システムの改革(2)(評価システムによる峻別と集中的重点整備)
3−4 「使う」観点の軽視→4−3 行政システムの改革(2)( 公」の意識に基づく新たなパートナーシップの確立)

となっていますね。原因と対策が対応していて・・・ちゃんとした報告書になっていますね。

第II部道路行政の改革のための具体的提言
第5章3つの政策目標の実現
5−1 安全で安心できる質の高い暮らしの実現

(1)安全な生活環境の確保
(2)歩行者・自転車を重視し、生活環境の改善に資する道路整備の推進
住宅地などの生活道路については車よりも歩行者や自転車の安全・快適な利用を優先すべきであり、速度規制やハンプの設置等により通過車両の排除を徹底するとともに、沿道と協働した緑化、無電柱化を行い、より質の高い生活環境を創出するゾーン対策を推進しなければならない。
また、高齢者を含む誰もが快適に移動できる歩行環境を形成するため、幅の広い歩道の設置、既設歩道の段差・勾配の改善に加え、道の広場など「たまり」空間の確保にも配慮した歩行空間のバリアフリ−化を積極的に推進すべきである。

パチパチパチ・・・・・ところで「たまり」空間って何でしょう?。

(3)災害や救急医療等緊急時への備え
(4)密集市街地の解消に資する都市計画道路の整備の推進
(5)沿道空間との協働によるまちの賑わいの創出や美しいまちなみの形成
(6)更新時代への対応

5−2 都市の再生と地域の連携による経済活力の回復

(1)道路の機能分化と既存道路の有効活用による渋滞の解消
違法路上駐停車の排除等による既存幹線道路の有効活用の徹底」「時間帯別料金の設定など都市部の高速道路の利用高度化のための料金施策の導入」が述べられていますが・・・・時間帯別料金の設定がどうして高速道路の有効活用になるのか記述がありませんね。渋滞する時間帯には料金を上げて交通量を抑制して渋滞を回避する,という意味でしょうか?。

(2)民間の建築活動の誘発など都市再生に資する道路の重点整備と都市計画道路の見直し
(3)都市部における総合的な交通システムの構築

国土交通省になって公共交通機関も所管するようになったのですから,今後に期待しましょう。

(4)連携を重視した地域ブロック圏・地域生活圏形成の支援
地域の住民がNPO活動等を通じて道路の使い方や道路整備のあり方について考えることが大切である。」とありますね。NPOがようやく登場しましたね。ところで「マルチモーダルな交通体系」って何でしょう?。わかりやすい報告書もバリアフリーのひとつだと思うんだけどナア。

(5)地域のモビリティの向上
(6)物流の効率化・情報化への対応

5−3 環境の保全・創造

(1)地球温暖化の防止
(2)沿道環境の改善
(3)自然環境の保全・創造

第6章行政システムの改革
6−1 評価システムによる峻別

(1)峻別のための評価システムの導入
(2)事業評価の充実
(3)施策評価の充実

6−2 集中的重点整備の実施

(1)集中投資期間の設定
ふむふむ,集中投資期間ってここで登場しましたね。「少子高齢社会が到来すること、ベビーブーム世代が年金受給者になること、道路構造物の老朽化が集中的に進むことなどを考慮すると、2010年代初頭までに成熟型社会において最低限必要な道路整備に目途をつけなければならない。」ですね。ことの当否は別にして,第4章に書く方がわかりやすいのではないでしょうか?。

(2)重点整備事業の峻別
(3)道路特定財源の活用

6−3 有料道路制度の見直し等

(国土交通省の範囲外である)道路公団の民営化は本報告書では論じられることはないと思っていましたが・・・「道路関係四公団民営化推進委員会の結論を踏まえ、必要な施策を具体化することが必要である。」ときましたね。同委員会の結論に異議はとなえないということなのでしょうね。
(1)有料道路制度の限定的運用
(2)多様で弾力的な料金施策の導入

環境改善、渋滞対策、交通安全等の政策的観点から料金設定の弾力化を図る必要がある。」がロードプライシング,「大都市圏等の混雑している有料道路においては、時間帯別に料金を変化させることにより、交通需要の平準化を図り渋滞を緩和することを検討すべきである。」が時間帯別料金でしょうか。「非混雑区間においては、一般道路から交通を転換させ既存有料道路ストックを最大限活用することが必要であり、有料道路利用者の受益実感も考慮し、値下げや割引等の導入により転換を促進することについて検討すべきである。」は需要の少ない(採算のとれない)有料道路の値下げは・・・民営化委員会の議論と整合性があるのでしょうか?ちょっと心配?。

(3)有利子負債の早期処理

6−4 既存ストックの有効活用

(1)多様で弾力的な料金施策の導入(再掲)(6−3(2)参照)
(2)道路の使い方の見直し

違法路上駐停車の集中的な排除」と「信号制御」が上げられていますね。
(3)路上工事の徹底合理化
(4)道路の情報化の推進

6−5 コスト縮減・技術開発

第4章との対応がなく唐突に登場しますが・・・・・まあ当たり前のことでしょうね。

(1)地域に応じた柔軟な道路構造
(2)整備効果早期発現のための時間管理手法の導入
(3)技術開発の積極的な推進

6−6 ユーザーの視点に立った開かれた行政運営

(1)道路ユーザーの参加による既存道路管理手法(道路パフォーマンスマネジメント)の導入
(2)市民参画型道路計画プロセス(PI:パブリックインボルブメントの導入)
(3)PFIの活用

はて?PFIって何なんでしょう。
(4) 「公」の意識に基づく新たなパートナーシップの確立


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